【能登半島地震を振り返る】冬の防災上の注意点と家族で見直す対策とは?

昨年2024年1月1日、午後4時10分。
石川県の能登地方を震源とする大地震により240名以上の尊い命が失われました。
このコラムでは、能登半島地震のほか、冬に大地震が発生する場合に注意したいこと、非常袋の見直しについて解説します。

能登半島地震とは?津波や火災による被害も甚大

能登半島地震
1年前の2024年、1月1日に石川県能登地方で発生した最大震度7の地震。
のちに「令和6年能登半島地震」と命名されたその地震によって、石川県輪島市と志賀町では1995年に発生した阪神淡路大震災に匹敵する震度7を観測し、東北から中国・四国の広い範囲で震度3の揺れが発生しました。
地震の直後から津波も発生し、日本海側を中心に広い範囲で津波注意報が、北陸地方では大津波警報の発表された地域もありました。
内閣府のまとめでは、大地震による建物被害や、火災・津波によって、石川県内を中心に負傷者は1,296名にのぼり、241名もの命が奪われ、甚大な被害が発生し、ライフラインや交通網にも大きな影響が出ました(2024年2月16日現在)。

冬の地震後に注意したい「低体温症」「エコノミークラス症候群」「感染症」

普段とは異なる避難所生活では、冬ならではの体調の変化に注意が必要です。

・低体温症

低体温症と対策
冬の避難所生活で最も注意したいのは「低体温症」です。低体温症とは、体の深部(腸などの臓器)の温度が35℃以下になる症状のことです。最悪の場合は心臓や肺の機能が低下し、死につながることもあります。手足が冷たくなったり、寒いと感じたり、また、歯をカタカタと震わせたりするようなサインがある場合は特に注意が必要です。症状が進むと判断力を低下させ、呼びかけに応じないような場合があり、この場合は近くに医師がいる場合はすぐに相談してください。また、高齢の方は低体温になっていることに気づきにくいため、周囲の方の呼びかけが重要となります。
低体温症を防ぐには「保温」「加温」「食べる」「隔離」がキーワードとなります。
「保温」は毛布を使ったり、なるべく厚着をしたりすることです。また、「加温」は湯たんぽなど発熱するものを体に当てることです。体を温める際は衣類の上から熱源を当て、手足など末端から温めると冷たい血液が心臓に一気に流れ込む可能性がありますので、なるべくお腹や胸から温めるようにしてください。また、「食べる」ことでエネルギーを補給でき、雨などの水で濡れた衣類を脱いだり、地べた、体育館の床などで敷物をしたり、冷たい物から「隔離」することが基本です。

・エコノミークラス症候群

トイレの回数を減らすため水分をとることを控えがちとなる避難所では、長い時間、同じ姿勢でいることで「エコノミークラス症候群」の発症リスクが高まるとされています。ペットなどがいることで、避難所ではなく車中泊をされている方も、さらに狭い環境となることが原因で発症しやすくなると言われています。
エコノミークラス症候群
予防としては、第二の心臓ともいわれる「ふくらはぎ」を中心にイラストのような運動をしましょう。そのほかにも、ゴムやベルトなどで締めなくてもよい服装を選ぶ、適度に水分をとることが大切です。

・感染症

水道などが遮断されていたり、慣れない集団生活を送ったりする避難所では「感染症」にも注意が必要です。
特に冬であれば、季節性インフルエンザや新型コロナウイルス(COVID-19)のほか、ノロウイルスなどの感染症のリスクが高まります。
感染症対策
水道などのライフラインが整っている場合は手洗い・うがいに加え、手や指の消毒が最も有効です。アルコール消毒や除菌シートなどを普段からご自宅でも揃えておきましょう。また、避難所内では、共同で使用しているトイレを清潔にしたり、マスクを使った咳エチケットを徹底したり、食品衛生を意識しましょう。

冬は「大雪」「乾燥」「火災」のリスクも高い

冬の災害や避難の際には、大雪や乾燥、火災のリスクが高まります。
冬型の気圧配置
これは、冬季は冬型の気圧配置になりやすいことが原因です。日本海側では大雪が起きやすく、地震の揺れによって普段よりも少ない積雪で家が倒壊する危険が高まります。大雪が予想されるときは、自宅で避難するのではなく、なるべく避難所に身を寄せるようにしましょう。
一方、乾いた風が吹きおろす太平洋側は、冬晴れが続きますが、乾燥によって火災が広がりやすい危険もあります。過去の地震の際は、停電復旧時の通電によって火災が発生したケースも多発しています。また、石油ストーブなどの前に燃えやすい物を置いたりすると普段以上に危険です。避難所に移動する前や停電時はブレーカーを切り、暖房器具の近くには燃えやすい衣服などを置かないようにしてください。
さらに空気が乾燥していると、塵やほこりなどの粉じんも舞い上がりやすく、片付けなどの作業をする際は目の細かいマスクや保護メガネで目をガードすることも大切です。

お正月にご家族でチェックを!冬に用意したい非常袋の内容とは?

ご実家に帰省されている方も多いお正月に、いま一度冬に用意したい非常袋の内容を確認しましょう。まずは、通常時の持ち出し袋のチェックリストをこちらのコラムからご確認ください。こちらにプラスして、追加アイテムを確認しましょう!
冬用非常用持ち出し袋チェックリスト

・低体温症対策

「保温」を意識したアイテムを非常袋へ入れましょう。モコモコした素材だとかさばるため、ジッパー付き袋に入れて、圧縮することもおすすめです。
また、おうちの備えは「加温」を意識し、お鍋を食べる際に使うカセットコンロやボンベ、スープジャーなどの備えが普段より多めに備えておくと、いざという時に温かな食事をとることができます。

・乾燥対策

暖房の効いた室内では空気が乾燥します。ハンドクリーム・リップクリームは普段から使い慣れているものだと、香りに落ち着くこともできるかもしれません。また、お肌の保湿剤は旅先に持って行く小さいサイズのものや、オールインワンタイプのスキンケアグッズも、かさばらないため、おすすめです。

・感染症対策

マスクや消毒スプレー、体温計は通常時から非常袋に入れておきたいですが、そのほかにも除菌シートやハンドソープがあると安心でしょう。また、上履きは足元を怪我せず移動できるほか、感染症防止や保温効果もあります。避難所などに行く際は持って行きたいアイテムの一つです。

ここまで、冬の防災について解説しました。
ご家族が集まるタイミングでいま一度、対策を見直しましょう!

<参考・画像引用>
・内閣府「特集①令和6年能登半島地震」
https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/r05/109/special_01.html

・気象庁「令和6年能登半島地震等の関連情報」
https://www.jma.go.jp/jma/menu/20240101_noto_jishin.html

・気象庁「【防災メモ】~冬の地震に備えて~」
https://www.data.jma.go.jp/wakkanai/jisin/bmemo/bmemo202101.pdf