2024年の木枯らし1号はいつ吹く?近年の傾向と木枯らしの吹く条件とは

秋から冬にかけて、西高東低の冬型の気圧配置となると、太平洋側では乾燥した北よりの風が吹きやすくなります。その中でも、晩秋から初冬にかけて吹く、北よりで強めの風を「木枯らし」といい、東京地方(東京23区と多摩地方)では「木枯らし1号」の発表される時期で、10月23日の二十四節気・霜降からは近畿地方でも発表の対象時期となります。
過去最も早い木枯らし1号の発表は、東京地方で10月13日(1988年)、近畿地方は10月23日(1981年・1993年・2020年・2021年)ですが、今年2024年はどうなるのでしょうか。近年の傾向や木枯らし1号の吹く条件をみていきましょう。
なお、今シーズンは、そらくら内の木枯らし1号特設ページで最新情報をお届けします!

木枯らし1号最新情報

木枯らし1号の発表基準とは

木枯らし1号の発表基準

東京地方(東京23区と多摩地方)の発表基準は、①10月半ばから11月末までの間に、②西高東低の冬型の気圧配置となり、東京の観測点で、③風向が西北西~北、④最大風速が8m/s以上であることで、すべての条件を満たす必要があります。
近畿地方の発表基準は、①霜降(10月23日頃)から冬至(12月22日頃)までの間に、②西高東低の冬型の気圧配置となり、大阪・神戸・京都・彦根・舞鶴・和歌山のいずれかの観測点で、③風向が北より、④最大風速が8m/s以上であることで、すべての条件を満たす必要があります。

木枯らし1号は発表されないこともある?近年の傾向とは

木枯らし1号は期間内に条件を満たさなければ”発表なし”となります。
過去に発表がなかったのは、東京地方で8回(1959年・1962年・1977年・1979年・2018年・2019年・2021年・2022年)に対し、近畿地方は1回(1992年)のみです。東京地方で発表されないことが多く、近年は顕著といえるかもしれません。
木枯らし1号が吹くためには、西高東低の冬型の気圧配置が強まる=強い寒気が流れ込む必要があります。一般に、エルニーニョ現象は”冷夏暖冬”、ラニーニャ現象は”暑夏寒冬”を日本にもたらすことが知られていて、エルニーニョ現象が発生している年は南風が吹き込みやすく、寒気は流れ込みづらくなります。近年で木枯らしの発表されていない年をみていくと、2018年は秋にエルニーニョ現象が発生していて、2019年は春にエルニーニョ現象が終息して平常の状態への移行期間だったと考えられます。どちらの年も暖冬で、2019/20年冬は、1898年の統計開始以来、一番の暖冬となりました。ただ、2021年と2022年のいずれも秋から冬にラニーニャ現象が発生していて、“ラニーニャ現象=寒冬で木枯らしが吹きやすい”という方程式は成り立ちません。

日本の天候への影響

エルニーニョ現象やラニーニャ現象と、暖冬・寒冬については不明確な部分も多く、過去には2014/15年冬のようにエルニーニョ現象でも寒冬となったり、2022/23年冬のようにラニーニャ現象でも気温の変動が大きく、一時的に記録的な高温となったりすることもあります。
近年の研究では、エルニーニョ現象の進行が早いか遅いかでインド洋の海面水温に影響が出て、エルニーニョ現象であっても暖冬傾向・寒冬傾向の違いがあらわれることが分かってきました。夏の早い時期からエルニーニョ現象が進行するとインド洋の海面水温が高くなり、フィリピン東方沖での対流が不活発になることで、偏西風は大きく北側へ蛇行し、暖冬傾向となります。反対に進行が遅ければインド洋の海面水温は大きくは上がらず、フィリピン沖で対流が活発になります。また、北太平洋上の低気圧が日本付近に張り出し、西高東低の冬型の気圧配置が強まって、寒冬傾向になるようです。
ラニーニャ現象に関しても、近年は地球温暖化などによって地球全体の海水温がかなり高く、エルニーニョ現象の影響が残ったりすることもあり、様々な要因が複雑に結びついています。

2024年の木枯らし1号はいつ吹く?

10月10日に気象庁が発表した最新情報によると、冬にかけてラニーニャ現象が発生する可能性があります。ただ、日本をはじめ北半球の中緯度を含む地球全体の海水温がかなり高く、地球温暖化の影響もあり、東・西日本では10月は平年より気温が高くなる予想です。11月頃からは、西回りで寒気が流れ込みやすくなり、西日本では次第に平年並みの気温に落ち着きそうです。
エルニーニョ現象やラニーニャ現象、今秋にかけての季節予報は目安に過ぎませんが、今シーズンの木枯らし1号はやや遅くなったり、発表されない可能性があります。2019年も2024年同様に春にエルニーニョ現象が終息し、ラニーニャ現象への移行期間でしたが、東京地方では木枯らし1号が発表されず、近畿地方では11月4日の発表となりました。今シーズンも傾向としては近いかもしれません。

木枯らし1号最新情報

<参考・引用>
・気象庁 「エルニーニョ現象及びラニーニャ現象の発生期間(季節単位)」
https://www.data.jma.go.jp/cpd/data/elnino/learning/faq/elnino_table.html

・気象庁 「日本の天候に影響を及ぼすメカニズム(エルニーニョ/ラニーニャ現象に関する知識)」
https://www.data.jma.go.jp/cpd/data/elnino/learning/faq/whatiselnino3.html

・塩崎公大・時長宏樹・森正人(2024)、“What Determines the East Asian Winter Temperature during El Niño?— Role of the Early-Onset El Niño and Tropical Indian Ocean Warming”、Journal of Climate