明日8月26日は「火山防災の日」となっています。
長野県と群馬県の県境にある浅間山(あさまやま)に1969年(昭和44年)8月26日に日本で初めて火山観測所が設置され、近代的な観測がはじまったことで制定されました。
このコラムでは日本に数多くある火山の種類などについて解説していきます!
御嶽山の噴火から今年で10年!火山防災とは?
2014年9月27日、いまから約10年前に岐阜県と長野県の県境の御嶽山(おんたけさん)が噴火したことは記憶に新しいのではないでしょうか?
山頂南西の地獄谷付近で水蒸気爆発が発生し、突然の噴火によって58名の尊い命が失われ、戦後最悪の火山災害とも言われています。
火山防災とは、火山で起きる現象が人々の暮らしや命に被害を与えることを防ぐことを目的としています。
火山の種類は3つ!日本の活火山はいくつ?
まずは、火山の基礎知識から解説していきます。
火山は、その形やマグマの粘り気によって大きく3つの種類に分類されます。
①楯状(たてじょう)火山
粘り気の弱いマグマによって平たい形になります。
例)キラウエア火山(ハワイ)
②成層火山
楯状火山と溶岩ドームの2つの火山の中間の性質を持っています。
例)富士山(静岡県・山梨県)、桜島(鹿児島県)
③溶岩ドーム
粘り気が強いマグマによって火山の上部にマグマがたまり盛り上がった形となります。
例)雲仙岳(長崎県)、有珠山(北海道)
大学時代に火山学の教授とキラウエア火山のあるハワイ島に火山を勉強しに行った筆者ですが、火山を表す言葉はハワイ語が起源になっているものも数多くあるんです。
溶岩が冷えて固まった状態で、ハワイ語で滑らかな溶岩のことを「パホイホイ溶岩」、これに対しトゲトゲした様子を表す「アア溶岩」といいます。かつて火山活動があった富士山周辺でも2つの溶岩が確認できますが、植物もあるため少し観察が難しいかもしれません。
世界には約1,500もの活火山があり、日本には活火山が2022年時点で111あります。世界全体の約1割となり、日本も世界有数の火山国と言われています。
噴火警戒レベルとは?
次に噴火が発生する際の避難する基準となる噴火警戒レベルを確認していきましょう。
大雨などほかの災害と同様、火山の活動状況に応じてとるべき対応が5段階で定められています。
<レベル1:予報>噴火予報:活火山であることに留意
火山活動は静穏ながら火山活動の状態によっては火口内で火山灰の噴出などがみられる。
<レベル2:警報>噴火警報(火口周辺)または火口周辺警報:火口周辺規制
火口周辺に影響あり。噴火が発生、あるいは発生すると予想される。
火口周辺の立入規制など。
<レベル3:警報>噴火警報(火口周辺)または火口周辺警報:入山規制
通常の生活ながら居住地域近くまで重大な影響を及ぼす噴火が発生、あるいは発生すると予想される。
レベル3以上は登山禁止・入山規制など危険な地域への立入規制
<レベル4:特別警報>噴火警報(居住地域)または噴火警報:高齢者等避難
居住地域に重大な被害を及ぼす噴火が発生すると予想され、警戒が必要な居住地域での高齢者などの配慮が必要な方の避難、住民の避難準備などが必要。
<レベル5:特別警報>噴火警報(居住地域)または噴火警報:避難
居住地域に重大な被害を及ぼす噴火が発生、あるいは切迫している状態にある。
危険な居住地域からの避難などが必要。
火山が噴火したときの注意事項
火山が噴火する際には大きく①噴石、②火砕流、③火山灰に注意する必要があります。
①噴石(ふんせき)
大きさによって被害の状況は変わります。
大きな噴石は風による影響を受けにくく、火口から2~4km以内に飛んでくる可能性があります。また、小さな噴石も10km以上離れた場所にも飛んでくる可能性もあり、大小問わず人命に関わります。
②火砕流(かさいりゅう)
高温の火山灰や火山ガスが一緒になって高速で流れ下る現象です。時速100km以上になることもあり、温度も数100℃に達し、通過した場所を焼失させます。
③火山灰(かざんばい)
火山による現象の中では広範囲に影響を及ぼします。人々の健康やライフラインに影響をもたらします。
①~③のほかにも、火山ガスや火山泥流(でいりゅう)などによる被害も発生します。
登山をする際は、前触れもなく噴火する可能性もあるので、常に火口付近の様子に変化がないか確認し、スマートフォンの電源はつけた状態にして、緊急速報や防災無線などに注意しましょう。
万が一、火山が噴火すると噴石によるリスクが高まります。近くの山小屋や岩陰に身を隠し、ヘルメットを持っている場合は装着し、ない場合もリュックなどで頭を守るようにしましょう。
火山灰マップとは?鹿児島で実践される対処方法をご紹介
火山灰はどの程度飛ぶのでしょうか?
日本一の高さの富士山がもし噴火した場合、上空の強い西風である偏西風に流され、千葉県や茨城県など関東南部の広い範囲で 火山灰による被害が発生すると想定されています。
<健康への影響>
慢性の喘息など症状を悪化させるほか健康な方も目や鼻・のどの呼吸器等に影響を与えるおそれがあります。
<ライフラインへの影響>
上下水道は目詰まりが発生し水道が使えなくなる
電力は発電所・変電所の設備等への影響及び断線など
自動車・航空機・鉄道などの交通網のマヒ
※特に自動車は視界が悪くなるほか雨などによって火山灰が濡れてアスファルトが滑りやすくなる可能性
近くに火山がない地域にお住いの方も火山灰による被害の発生する可能性があります。
基本的な対策としては大雨などの備えと同じで非常用持ち出し袋を用意しておきましょう。
このほか、火山灰はガラスと同じような成分となっていますので、コンタクトレンズはなるべく使わないようにし、目を守るゴーグルなどの準備があると安心です。
また、車に積もった火山灰は水を使ってワイパーやタオルなどでこすってしまうと、すりガラスのようになってしまい、そのまま運転すると大変危険です。乾いたモップなどで優しく拭き取るようにしましょう。
桜島(さくらじま)がある鹿児島県では1年間に100回近く噴火し、火山と暮らしが密着している地域ですが、「克灰袋(こくはいぶくろ)」というゴミ袋を使って火山灰が集められています。この袋のネーミングも火山灰を克服するためにつけられました。
ここまで火山と防災について解説してきました!
温泉など恵みをもたらす一方、噴火すると恐ろしい一面もある火山。この機会に対策をいま一度見直してみましょう!
<参考>
・気象庁「「火山防災の日」特設サイト」
https://www.data.jma.go.jp/vois/data/tokyo/kazanbosai/index.html
・気象庁「御嶽山の9月27日噴火の概要と気象庁の対応」
https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/CCPVE/kentokai/kansoku/kansoku10/kansoku10_s2.pdf
・中部森林管理局「御嶽山の災害」
https://www.rinya.maff.go.jp/chubu/kiso/morigatari/saigai.html
・気象庁「噴火警戒レベルの説明」
https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/level_toha/level_toha.htm
・内閣府防災情報のページ「1 世界の火山」
https://www.bousai.go.jp/kazan/taisaku/k101.htm
・内閣府防災情報のページ「火山への登山のそなえ」
https://www.bousai.go.jp/kazan/kazan_sonae/index.html
・内閣府防災情報「(5)①富士山ハザードマップについて」
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/5/pdf/siryou5-1.pdf