昨年2023年は、全国58の桜の標本木のうち27地点で過去最も早い、あるいは最早タイとなる記録的早さで桜が開花しました。特に、東北は全地点で、北陸は3地点すべてで、関東甲信越は10地点中8地点と、北・東日本中心に開花が早まる傾向が見られました。
桜の開花がこれほどまでに早まった原因は何だったのでしょうか。桜の開花に必要な条件や早咲きとなった原因を考察し、さらに今年2024年の傾向と最新の桜の標本木の状況を調査します。
桜の開花に必要な条件とは
桜の開花には“気温”が大きく関係しています。
ポイントは、①秋から冬にかけての寒さと、②晩冬から春にかけての暖かさです。
桜のつぼみは、秋から冬の寒さによって目を覚まします。これを「休眠打破」といい、休眠打破が行われるのに必要な寒さの量を「低温要求量」といいます。低温要求量は桜の品種によって異なり、ソメイヨシノの場合は10月以降、おおむね8度以下の寒さに約800~1,000時間さらされる必要があります。
目覚めた桜は、晩冬から春先の暖かい日が続くことでつぼみが生長して花を咲かせます。特に3月上旬から中旬頃の気温の急激な上昇は、桜の開花に大きく影響すると考えられます。
休眠打破が不十分だと桜のつぼみが寝ぼけたような状態となり、春先の気温が高くても開花が遅れることがあります。逆に、秋から冬の冷え込みが厳しいと一気に開花し、きれいに咲き揃うといわれています。
2023年は北・東日本で記録的早さだった!早咲きの原因とは?
2023年冬(12月~2月)はラニーニャ現象の影響で、上空の偏西風が日本付近で南へ蛇行し、寒気が流れ込みやすくなりました。12月以降は度々強い寒気が流れ込み、2月にかけて北日本を中心に低温傾向となりました。北・東日本では概ね1月中に休眠打破を終えたと考えられます。
そして、春(3月~5月)は全国的に高温傾向で、特に3月上旬から4月上旬にかけてその傾向が顕著になりました。この気温のメリハリによって桜のつぼみの生長が進んだことが、記録的に早い開花の要因になったといえます。
それでは、同様に桜の開花が早かった2021年はどうだったのでしょうか。
2021年冬(12月~2月)は、冬の前半(12月から1月上旬)に強い寒気の影響を受けましたが、1月下旬からは一転し、東・西日本中心に平年を上回る気温となりました。ただ、この年の休眠打破も北・東日本は1月中に終えていたとみられます。そこへ2月以降の気温上昇が加わり、勢いそのままに開花が早まった印象です。
どちらの年も共通しているのは、休眠打破はしっかり行われたことと、3月から4月上旬にかけての気温が高かったことです。
2024年最新の桜の状況は?
2月24日(土)午前時点での東京の桜の標本木(東京都・靖国神社)は、つぼみはまだまだ小さく固くて、茶色い状態となっています。
この冬は、関東や東海、西日本では寒気の流れ込みはあったものの継続しなかったため、休眠打破は弱めとなり、2月上旬になってようやく完了したとみられる所が増えました。
2月22日 (木)発表の最新の1か月予報によると、この先は3月上旬にかけて一時的に寒気の流れ込みやすい状態となりますが、中旬以降は平年並か平年より気温が高くなりそうです。3月上旬から中旬頃に気温が急上昇すると、桜の開花は早まることが多いため、気温の上がり幅によっては今シーズンの桜の開花も早まる可能性があります。今年の桜の開花傾向も“3月の気温上昇”と“平年を上回る早さ”がキーワードとなりそうです。
そらくらでは2月29日(木)に今シーズン第3回目となるさくら開花・見頃予想を発表します。最新の予想発表まで今しばらくお待ちください。
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<参考・引用>
・気象庁 「生物季節観測の情報」
https://www.data.jma.go.jp/sakura/data/index.html
・気象庁 「前3か月の気温の経過」
https://www.data.jma.go.jp/cpd/longfcst/tenkou/hensa_temp.html
・気象庁 「報道発表資料」
https://www.jma.go.jp/jma/press/hodo.html