【医師監修】備えたい 秋に流行するこどもの病気とその症状とは?

暑さは落ち着き朝晩が 冷えるようになってくると、子育てをしていて気を付けたいのが秋に流行するこどもの病気。秋に流行するこどもの病気の種類やその症状、病院に連れていくタイミング、予防方法について、小児科医であるとともに気象予報士の資格を持つ吉田邦枝先生にお尋ねしました。

<監修していただいた先生>

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吉田邦枝先生【小児科医】

    東京医科歯科大学医学部卒。同大学小児科学教室に入局、関連病院で研修後、子育て期間を経て、現在は東京都内、埼玉県内のクリニックに勤務。日々こどもの診療に奮闘中。自然科学全般に興味があり、気象予報士の資格も取得。

 

――こどもの病気で秋に流行する病気はなんですか。

吉田先生:まず、このカレンダーは新型コロナウイルス流行前の主な流行期です。新型コロナウイルス流行後、2020-2021年、2021-2022年の2シーズン にわたって冬にインフルエンザが流行しないといったことが起こりました。2022年秋現在 は通常の行動パターンに戻ってきて、流行の季節も戻る可能性はありますが、もう数年経過をみないとわからないと思われます。
通常であれば、秋以降RSウイルス感染症という病気が流行します。先にも述べた通り、流行時期が変わり、2021年と2022年 は7月を中心に大きく流行しました。ただし本来の流行期にあたる秋から冬にかけてはまだまだ注意が必要です。
RSウイルスだけでなく、気管支炎や肺炎など、秋は気道系の感染症が多くなってきます。感染症ではないですが、喘息発作も秋に多くなります。秋の終わりにはウイルス性の胃腸炎も増えてきます。

 

――秋になぜそのような病気が流行するのでしょうか。

吉田先生:夏から冬への季節の変わり目である秋は、気温が下がるのと同時に、空気が乾燥してきます。乾燥した空気や冷たい空気は、気道の繊毛(せんもう)運動 の働きを弱め、ウイルスなどが呼吸器系に侵入しやすくなります。また寒暖差が大きいのも体調を崩しやすい原因の一つです。
そのほか、ウイルスそのものが好む気候というのもあるため、それぞれの病気が流行ってきます。

 

――秋に流行る病気にはどんな症状がありますか。

吉田先生:RSウイルスは風邪のウイルスの一種ですが、気管支炎や肺炎を起こしやすいウイルスです。発熱や咳で始まり、しだいに咳がひどくなり、特に低年齢では喘息のようにゼイゼイしてきます。生後6か月未満の赤ちゃんや基礎疾患のあるこども、低出生体重児などでは重症化し、入院が必要になることもあります。基礎疾患によってはあらかじめ抗体を注射することもありますが、いわゆるワクチンはありません。
喘息の発作は、風邪をひくことがきっかけでも起こりますが、典型的な症状は熱がないのに咳込む、呼吸するときにゼーゼー・ヒューヒュー音がする、呼吸が苦しそう・苦しいと訴えるなどです。深夜から明け方、夕方の急に冷え込んでくる時間帯に多く起こります。天気の崩れる前にも起こりやすいです。
また、ウイルス性胃腸炎は、嘔吐や下痢、発熱の症状があり、年齢に関係なく発症するため、こどもがかかると家族みんなでかかってしまいます。

 

――こどもを病院に連れていくベストなタイミングを教えてください。

吉田先生:生後28日未満の新生児や、4か月ぐらいまでであれば、熱が出たらすぐ行きましょう。赤ちゃんは熱を出さないとよくいいますが、この月齢で熱を出す場合は、重症の感染症の可能性があります。ただし、あきらかに予防接種後の熱ということが分かっていれば、1日ぐらい様子をみてもかまいません。その場合は熱があっても赤ちゃんは比較的元気です。
5か月以降であれば、夜に熱 が出た場合、本人が元気そうであれば、夜間の救急病院ではなく、朝まで様子見ても大丈夫です。急いで病院にいったほうがいい症状としては、ぐったりしている、異常に機嫌が悪い、ミルクやおっぱいを飲む量が極端に少ない、顔色が悪い、呼吸が苦しそう、おしっこが極端に少ない時などが挙げられます。小学生ぐらいになれば自分でどのぐらい調子が悪いか訴えられますが、ぐったり感が強い、痛みが強いようなときは早めに病院に連れて行ってください。
こどもの様子が「普段と違う」という時は、体調を崩す前兆のことがあります。そのような時は注意して見てあげましょう。

 

――病気の予防方法を教えてください。

吉田先生:基本は毎日の手洗いやうがいになります。小さいこどもは周りにあるものを何でも口に入れるため、外出時は気をつけてあげてください。集団生活での感染はある程度仕方がないことですが、少なくとも大人から子供にうつさないようにしましょう。特に、赤ちゃんの場合は、家族からの感染がほとんどなため、家族が病気を持ち込まないことが重要です。冬に流行するインフルエンザの予防接種は生後6か月からしか受けられないため、家族が予防接種を受けることで予防になります。
ワクチンのある病気については、積極的に進めていきましょう。ワクチンのある病気は、重症化して命の危険がある病気が多いです。生後2か月から定期的に予防接種を受け、着実に免疫を付けていくことが大切です。

 

――予防接種のスケジュールの組み方について教えてください。

吉田先生:「NPO法人VPD(ワクチンで防げる病気)を知って子どもを守ろうの会」のホームページ(https://www.know-vpd.jp/)に掲載されている「予防接種スケジュール」が参考になります。接種間隔や期限など、スケジュールを組むのが難しい場合は、近くの小児科等に相談するとよいでしょう。生後2か月から開始すれば、スムーズにすすめることができます。なお、自費扱いのワクチンでも、自治体によって補助が出る場合があるので、知っておくとよいでしょう。
3歳ごろになると、予防接種に行くことがわかってきます。黙って連れていって突然注射では、こどもはパニックになります。あらかじめ説明をしておくと、いざ接種となった時にあまり暴れないで済みます。そして我慢できたらしっかりほめてあげましょう。

 

<引用>
NPO法人VPDを知って子どもを守ろうの会 予防接種スケジュール
https://www.know-vpd.jp/