4月後半から5月は「メイストーム」による強風・暴風に要注意!原因や防災上の注意ポイントを気象予報士が解説

春は日本付近を移動性の高気圧と低気圧が交互に通過し、天気がコロコロ変わりやすい季節です。晴れると比較的過ごしやすい陽気となりますが、雨が続くこともあり、日本付近で低気圧が発達すると大荒れの天気となる可能性もあります。
このコラムでは、大型連休の頃から5月下旬にかけて荒天をもたらす「メイストーム」について、気象予報士が解説します。

メイストームとはどういう意味?いつ頃発生する?

4月下旬から5月頃にかけて、日本海や北日本付近で低気圧が急発達し、各地で大荒れの天気になることがあります。これをメイストーム、別名「5月の嵐」といい、低気圧が台風並みに発達し、各地に強風や暴風をもたらしたり、大雨を降らせたりすることもあります。
メイストームという言葉が使われるようになったきっかけは、1954年5月8日に黄海で発生し、9日から10日にかけて急激に発達しながら日本海からオホーツク海へ進んだ低気圧です。暴風や高波によって大荒れの天気となり、漁船の集団遭難などによって400名近くが犠牲となりました。
また、「春の嵐」という場合はもう少し期間が長く、主に3月から5月頃にかけて低気圧が急速に発達して荒天となる場合を指し、後述する「春一番」から「メイストーム」までを含みます。

メイストームの原因とは?

春に低気圧が発達するメカニズム

春はほかの季節よりも、日本の北側にある冷たい空気と南側の暖かい空気の温度差が大きいため、低気圧が急速に発達しやすくなります。
低気圧の進行方向前側には南からの暖かい空気が流れ込み、低気圧の進行方向後面には北からの冷たい空気が運び込まれるため、日本上空で暖かい空気と冷たい空気がせめぎ合い、偏西風の蛇行が次第に渦を作って上昇気流が起きます。それを補うように、周辺から風が吹き込み、二つの空気の温度差が大きいほど、低気圧は発達するのです。急速に発達した場合は、台風並みの暴風が吹くこともあります。

「爆弾低気圧」や「春一番」との関係や違いは?

メイストームと同様に、強風や荒天をもたらす現象としては「爆弾低気圧」や「春一番」があります。

・爆弾低気圧とは

爆弾低気圧

爆弾低気圧とは、気象庁では急速に発達する低気圧と表現していますが、一般的には24時間に24hPa以上、低下する低気圧を指します。春先は爆弾低気圧が発生しやすく、台風並みの強風や暴風をもたらすことがあります。
<メイストームとの違い>
爆弾低気圧は時期を問わないのに対して、メイストームはMay=5月(4月下旬から5月頃)に発生し、急発達する低気圧を指します。

・春一番とは

春一番の発表基準

春一番とは、立春から春分までの間に、広い地域で初めて吹く暖かくやや強い南よりの風です。関東・北陸から九州の各地方で発表されます。発表の目安は、①立春から春分までの間であることや、②南よりの風であることは共通していますが、風速や気温、気圧配置などの条件は地方によって多少異なります。
<メイストームとの違い>
春一番は立春から春分(2月上旬から3月中旬頃)に吹くやや強い南よりの風なのに対して、メイストームはMay=5月(4月下旬から5月頃)と時期が異なります。

過去のメイストームや春の嵐による災害事例

過去にはメイストームや春の嵐によって、記録的な大雨や暴風などがもたらされています。今回は3つの事例について解説していきます。

・2011年5月30日頃

台風2号から変わった低気圧が本州南岸を通過し、上空には強い寒気が流れ込んだため、福井県などで記録的な大雨となり、24時間降水量は福井県大飯(オオイ)で350mmを超え、川の増水や浸水が発生しました。また、東北地方の太平洋側でも雨や風が強まり、宮城県仙台では1時間降水量が38.5mmと、5月としては観測史上1位の値を更新しました。

・2012年4月3日頃

日本海付近を横断した爆弾低気圧は、中心気圧が24時間に42hPaも下降しました。この気圧低下は、知らず知らずのうちに地表面が400m上昇するほどの変化に匹敵します。前線の通過に伴い局地的に非常に激しい雨が降り、記録的な暴風に見舞われました。4月3日から5日の9時までにアメダスで観測した最大風速は、和歌山県和歌山市友ヶ島(トモガシマ)で32.2m/sに達するなど、10年以上観測を続けている観測地点889地点のうち75地点で当時の観測史上1位を更新しました。

・2024年5月17日頃

発達した低気圧や上空の寒気の影響で、北陸や東北日本海側を中心に大荒れの天気となりました。山形県や新潟県で突風が吹き、最大瞬間風速は、山形県飛島(トビシマ)で32.2m/s、新潟県両津(リョウツ)では32.3m/sなど、31の観測地点で当時の5月の1位の値を更新しました。

春は風が強い!強風や暴風の注意ポイントとは?

風の強さ

春は大風の季節と言われるほど、全国的に強風が吹きやすく、特に太平洋側はその傾向が顕著です。
天気予報で「急速に低気圧が発達」「春の嵐」という言葉を見聞きしたときは、暴風への備えを行いましょう。「予想される最大瞬間風速」の数字にも注意が必要です。最大瞬間風速が30m/s以上と予想される場合は、車を通常の速度で運転するのが困難になったり、看板が落下・飛散したり、倒木や家屋が倒壊したりするおそれがあります。事前に飛ばされやすい物を屋内にしまいましょう。

強風対策

出典:政府広報オンライン(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201304/2.html)

また、電柱が倒れて停電となる可能性もありますので、事前にスマートフォンやモバイルバッテリーの充電を満タンにし、懐中電灯の準備もしておきましょう。
さらに、鉄道などの公共交通機関が乱れる可能性があります。鉄道が運休したり、飛行機が欠航したりする場合もありますので、事前に情報を確認してください。

 

<参考・引用>
・気象庁「過去の気象データ検索」
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php

・政府広報オンライン「台風並みの暴風となる「春の嵐」「メイストーム」。気象情報や警報・注意報に注意して安全対策を」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201304/2.html