【線状降水帯の予測は難しい?】今年からエリアが詳細に!大雨が予想されたら取りたい行動とは?

梅雨から台風シーズンは、毎年のように豪雨による災害が発生しています。近年では「線状降水帯」というワードを耳にする機会が多いと思いますが、線状降水帯はどのように予測されるのでしょうか?この記事では、線状降水帯の予測とその難しさについて解説していきます。

線状降水帯とは?

線状降水帯とは、発達した積乱雲が列になって次々と発生することで線状に並び、幅20~50km、長さ50~300km程度にも及ぶ降雨域です。線状降水帯は、ほぼ同じ場所を通過・停滞することが多いため、土砂災害や洪水などが発生する危険性が急激に高くなります。そのため、線状降水帯の予測精度の向上が重要となっています。なお、線状降水帯の仕組みや注意点は以下のページで解説していますので、ぜひ確認してみてください。

線状降水帯の仕組みと注意点

見逃し率と的中率って?線状降水帯の予測精度は?

天気予報の予測が当たっていたか検証するため、「見逃し率」と「的中率」などの指標で評価をします。見逃しとは、降水なしと予報したものの、実際には降水があった(雨が降った)場合を言います。この見逃しが、全予報に占める割合を「見逃し率」と呼びます。例えば、全部で10回予報をしたとします。その10回すべてが「雨は降らない」と予報したものの、実際に雨が降ってしまった回数が3回だった場合、見逃し率は30%となります。
また、的中とは、予報が降水なしで実際にも降水がなかった場合、または、予報が降水ありで実際にも降水があった場合をいいます。この的中が、全予報に占める割合を「的中率」と呼びます。

それでは、線状降水帯の適中率はどのくらいなのでしょうか?2023年は、気象庁から線状降水帯の予測情報が22回発表されましたが、実際に発生したのは9回で、的中率は約41%という結果になりました。また、線状降水帯の予測情報の発表が無かったものの、実際に線状降水帯が発生した見逃し率は約61%となりました。このデータから、線状降水帯が予測されても5回に3回の回数で発生しないケースがあり、予測が無くても5回に3回は線状降水帯が発生するケースがあります。つまり、予測されている場合はもちろん、予測されていない場合も線状降水帯が発生する可能性があるため、避難行動をとるなど対策が必要になります。

気象庁では、線状降水帯の予測向上のための取り組みが進められていて、ここ数年は湿度の観測が強化されています。その中でも注目なのが、「マイクロ波放射計」という観測機器です。マイクロ波放射計は、大気からのマイクロ波を測定することで、水蒸気の量を求めることができます。この、マイクロ波放射計のデータを用いることで、線状降水帯の予測に一役買っているのです。

今年から府県単位の予測も開始!発表されたら取りたい行動とは?

気象庁では、大雨による災害の危険度が高まり、線状降水帯が発生して大雨となるおそれがある場合は、半日程度前から「線状降水帯」というキーワードを用いて、「顕著な大雨に関する気象情報」が発表されます。この線状降水帯による大雨の呼びかけですが、今までは地方単位(例えば、関東甲信地方や東海地方など)で発表していました。今年2024年5月27日から、地方単位から府県単位(千葉県や静岡県など)の予測を開始しました。つまり、予測されるエリアがより詳細になり、大雨災害に対する危機感をより高めて、安全な行動を取ることが可能になります。

それでは、もし線状降水帯の予測情報が発表されたらどのような行動を取ったらいいでしょうか?
・事前にできる対策
①明るい内に避難所へ移動
暗くなってからの避難は、停電が発生すると足元が見えにくく、避難中に冠水している道路でマンホールから落ちるなどの事故も発生しています。なるべく明るい内に避難所へ向かうようにしてください。また、大雨が予想される地域に離れて暮らすご家族にも電話などで連絡を取り、注意喚起をするようにしてください。
②モバイルバッテリーの充電や水の確保
停電に備え、モバイルバッテリーや充電式の電池を満タンにするようにしてください。また、断水に備え念のため1人3Lを目安に水道水を汲み置きしておきましょう。
・災害が迫る直前に取りたい対策

道路が冠水したり、川が氾濫したりして避難が難しい場合や、土砂災害の前兆現象に気づいた場合は、自宅のなるべく安全な場所に移動するようにしてください。避難の基本は、避難所に向かう「水平避難」ですが、浸水が始まるなど移動が難しい場合は「垂直避難」をしてください。垂直に避難する場合は、自宅の2階以上の崖などから一番離れた部屋にいるようにしましょう。

参考
気象庁 線状降水帯の予測精度向上に向けた取組の進捗状況について(今年度の振り返りと来年度以降の計画) 線状降水帯予測精度向上ワーキンググループ(第7回会合)
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/shingikai/kondankai/senjoukousuitai_WG/part7/part7-shiryo1.pdf