気温が上昇するこの時期、初夏が迫るなか気になってくる体調の変化が「熱中症」です。
最近、天気予報やニュースなどでも、よく見聞きする「熱中症警戒アラート」とはどのような情報なのでしょうか?また、今年2024年からは一段階、警戒を引き上げる「熱中症特別警戒アラート」の運用も開始されます。このコラムでは、気象予報士が対策も含め、解説します!
熱中症警戒アラートとは?
「熱中症警戒アラート」は、熱中症によって緊急搬送される方の数は増加傾向にあるため、予防を呼びかける目的として運用が始まりました。
環境省と気象庁が連携しながら情報発信をしていて、2020年7月からは試験的に関東甲信地方で、翌年の2021年4月下旬以降は、運用の範囲を全国に広げ、発表が開始されました。
熱中症の危険が極めて高くなると予測される際に、注意を呼びかけ、予防行動をとってもらうために発表する情報となっています。
どんな時に発表され基準は?開始される時期についても解説
「熱中症警戒アラート」は、「暑さ指数(WBGT)」と呼ばれる指数が指標になっています。
「暑さ指数(WBGT)」とは一体どのような指数なのでしょうか?
初夏と7~8月の暑さをイメージしてみてください。4~5月の暑さは湿度が低いため比較的カラッとしていますが、7~8月の暑さは同じ気温でも湿度が高いためムシムシとした印象を受けると思います。
これは、汗の乾きづらさが原因。空気がカラッとして汗が乾きやすいということは、気化熱によって、汗をかき体温を下げることができますが、反対に湿度が高く汗が乾かないと体温が下がりにくくなってしまいます。
熱中症は気温だけではなく「湿度」がポイントになります。「湿度」や「日射など周辺環境(輻射熱:ふくしゃねつ)」を考慮した指数が「暑さ指数(WBGT)」です。
「熱中症警戒アラート」は「暑さ指数(WBGT)」が33以上の場合に、都道府県単位で発表されます。「熱中症警戒アラート」は一年中運用されているわけではなく、4月の第4水曜日から10月の第4水曜日とされています。
今年は「熱中症特別警戒アラート」運用開始!
2021年に全国で運用が開始されて以降、猛暑の年が続いた影響もあり、期間中に発表された「熱中症警戒アラート」の回数は年々増加傾向です。特に厳しい猛暑となった昨年2023年は全国の累計発表回数は過去最多の1,000回を超えました。
熱中症を防ぐための新たな警戒情報として、今年からは「熱中症特別警戒アラート」の運用が開始されます。
「熱中症特別警戒アラート」は、過去に例のない危険な暑さが予想される場合、環境省と気象庁が共同で記者会見を行い、対策を呼びかけます。
基準は「熱中症警戒アラート」が発表された都道府県内のいずれかの地点で33以上に対し、「熱中症特別警戒アラート」は都道府県内の全地点で35以上となった場合で、より一層の警戒が必要になります。
発表された場合の対策を解説!
まずは、熱中症警戒アラートが発表された場合、どのような対策をとったら良いでしょうか?積極的な熱中症予防行動をとるようにしましょう。具体的には以下の通りです。
・急用がない場合は外出を控える
・部屋の中でもエアコンを使用する
・のどが渇く前に水分補給を心掛ける
・家族や身の回りの人に声をかける
→高齢者や子ども、障害のある方、体調の悪い方などは特に気にかけましょう
・WBGTに応じて屋外や空調のない屋内での運動は原則中止や延期を検討する
そらくらでは、熱中症対策と子供向けの対策をそれぞれまとめています。参考にしてみてください!
次に、熱中症特別警戒アラートが発表された場合は、さらにもう一段階上の対策が必要となります。具体的な対策は次の通りです。
・学校やイベントの主催者は熱中症対策が徹底できていない場合、運動やイベントの中止を検討する
・企業はリモートワークへ変更を呼びかける
また、自宅にエアコンがない人が避難する場所として「クーリングシェルター」を用意する取り組みが各地で進められています。自治体の施設だけではなく、ショッピングセンターなど民間の施設を事前に指定している市町村もあります。関東地方では、早めに指定している市町村が多くなっていますので、いま一度、お住いや学校・職場のある自治体のHPを確認してみましょう。
<参考>
環境省「熱中症予防情報サイト」
https://www.wbgt.env.go.jp/
環境省「熱中症警戒アラート発表履歴」
https://www.wbgt.env.go.jp/alert_record.php
環境省「法施行前のクーリングシェルターの設置状況」
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/sg_pcm/R0503/doc02-2.pdf