ホームランと気温の関係とは? WBC決勝舞台の気候も紹介!

3月も中旬に入り、野球シーズンも開幕が近づいてきましたね。15日(水)から始まるWBC(World Baseball Classic)の準々決勝ラウンドや決勝ラウンド、高校野球では18日(土)から開催される春の選抜、そして30日(木)はプロ野球開幕など野球イベント盛りだくさんとなってきています。
ところで、高校野球やWBCといった負けられない短期決戦では、ホームランによる得点がチームの流れをよくすることがあります。特にWBCでは、大谷翔平選手や村上宗隆選手のホームランに期待したいところですよね!このホームランについて、MLB(Major League Baseball)の野球統計データを用いた研究によると、なんと気温や標高と関わりを持つことが発見されています!この記事では、気温や標高とホームランの関係について紹介していきます。

暑い日は寒い日よりホームランが出やすい

ホームランが増えるために必要なものは、ズバリ暑さです。
暑い日、具体的には32℃ぐらいだと、10℃前後の寒い日に比べ、ホームランの数や得点、打率など攻撃面での指標が高くなるという関係性が明らかにされております。また、打球の飛距離についても、寒い日と比較して暑い日は5mぐらい長くなる、との報告もあるようです。
考察としてまず挙げられるのは、気温と空気密度の関係についてです。
空気は暖かければ膨張するため、体積が大きくなります。空気の重さが変わらずに体積が増えていくと空気密度は小さくなります。この空気密度が小さくなると、野球ボールが空気から受ける抵抗が小さくなるため、より遠くに運ばれるようになるんです。
他にも、気温が高いときは低いときに比べて、ボールの反発係数が大きくなることや選手のパフォーマンスに良い影響を与えるといった議論もあるなど、気温は私達の生活に密接な関わりがあると言えます。
野球を含め、様々なスポーツをする際は、雨などの天気に加え、気温についてもチェックしてみるのもいいかもしれません。

標高の高い球場は打高投低に影響する

球場の標高もホームランの数に影響があります。MLBのチームの1つであるコロラド・ロッキーズの本拠地クアーズ・フィールドは“打者天国”と呼ばれおり、標高約1,600mに位置しています。標高が高くなると、気圧が低くなるため、空気の密度も小さくなります。よく耳にする富士山など高い山を登山する際に “空気が薄く感じられる”という状態になります。野球ボールが空気から受ける抵抗も低くなっているため、打球の飛距離が伸びるようになります。
また、クアーズ・フィールドは投手が苦手とする球場としても有名です。空気密度の低さは、投手の変化球のキレや制球に悪影響を与え、結果として甘く入ったボールを打たれるといった状況に陥りやすくなるそうです。このような打高投低な球場のクアーズ・フィールドでノーヒットノーランを達成した日本人2人目のメジャーリーガー・野茂英雄選手は素晴らしい功績を残したといえます。

WBC決勝ラウンド舞台の気候は?

2023年WBC決勝ラウンド舞台となる球場は、ローンデポ・パークです。アメリカ合衆国マイアミに位置しています。ケッペンの気候区分によるとマイアミは熱帯に分類され、雨季や乾季があります。年間を通じて温暖な環境です。3月の月平均気温の平年値(1991年から2020年までの平均)は、東京で9.4℃、マイアミは22.9℃と、マイアミは東京に比べ14℃ほど高くなっています。
ホームランへの期待が高まりそうですね。日本選手がたくさん活躍できるように遠く離れたアメリカの球場にも熱い声援を届けましょう!

<参考>
・Koch, B., and A. Panorska, 2013: The impact of temperature on major league baseball. Amer. Meteor. Soc, 5, 359–366.
・Chambers, F., B. Page, and C. Zaidins, 2003: Atmosphere, weather, and baseball: How much farther do baseballs really fly at Denver’s Coors Field? Prof. Geogr., 55, 491–504.
・WORLD BASEBALL CLASSIC
https://www.wbc2023.jp/
・「世界地誌シリーズ4 アメリカ」矢ヶ崎 典隆 朝倉書店
・過去の気象データ検索
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php?prec_no=&block_no=&year=&month=&day=&view=
・世界の天候データツール(ClimatView月統計値)
https://www.data.jma.go.jp/cpd/monitor/climatview/frame.php