3月に入り、スギ花粉の飛散ピークを迎えています。
2月の花粉記事では、この春の傾向や花粉に注意な日の気象条件、一般的な対策などを紹介しましたが、今回は、子供の花粉症対策に焦点を当ててお話します。
・花粉症有病率は増えていて、子供の2~3人に1人は花粉症
・増加の原因はスギ・ヒノキの木の成長や「衛生仮説」
・花粉症と風邪の違いは「目の痒み」を伴うかどうか
・花粉飛散情報を確認し、マスクやメガネで予防しよう
子供も花粉症有病率が増えている
日本耳鼻咽喉科学会が1998年、2008年、2019年の約10年ごとに全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象にアンケート調査を行なっています。約2万人を対象とした疫学調査によると、スギ花粉症の有病率は1998年には16.2%だったものが、2008年には26.5%、そして2019年には38.8%と増加の一途を辿っているとの報告がされています。
年齢別では、5歳から9歳の年代では2008年では約13%だった有病率は2019年には約30%に増加。10代では2008年では約30%だった有病率が2019年には約50%に増加していて、子供も花粉症の有病率は約2~3人に1人にのぼっています。
このため、大人だけでなく、子供も花粉症対策が大切です。
なぜ増えているのか
花粉症の方が増加傾向にある理由はいくつかあります。
【原因①】戦後に植樹されたスギやヒノキの木が成長し、花粉を飛散させる状況が続いているため
日本は戦争により木々の多くが焼けてしまったため、戦後に生育の比較的早いスギや、ヒノキの木が多く植えられました。
その木が年々成長することによって、花粉の量が増えていることが理由の一つです。
さらに、地球温暖化による夏の気温の上昇が、スギの木の生育を助け、より成長が加速されているとも言われています。
【原因②】日本は清潔になりすぎて逆にアレルギー疾患が増えてしまった
もう一つの主な理由として、「衛生仮説」というものがあります。
「衛生仮説」とは、幼少期に清潔すぎない環境で過ごした子供はアレルギー疾患にかかりにくい、と言われているものです。
一般に、日本などのいわゆる先進国と呼ばれる国では、花粉症や食物アレルギーの症状を持つ方が増えていて、これは、幼少期の衛生環境が日本では比較的清潔であることが関係しています。
花粉症と風邪症状の見分け方
花粉症増加の理由を見てきましたが、次に、花粉症と風邪の症状の見分け方のポイントをご紹介します。
毎年花粉症に悩まされる筆者も、くしゃみや鼻水などの症状が出るとき、風邪か花粉症か分からなくなることがあります。
まず分かりやすいのは、「目の痒みを伴うかどうか」です。花粉症はくしゃみや鼻水に加えて、目の痒みを伴うことが多くなっています。
ほかに花粉症に現れやすい症状として、くしゃみを連発しやすい、鼻水の状態は水のようにサラッとしていることが多い、などがあります。
逆に、鼻水の色が黄色っぽく粘り気があったり、熱を伴ったりする場合は、風邪の可能性があります。
また、花粉にアレルギーがあるかを確認したい場合は、医療機関でアレルギー検査を受けるとはっきりするでしょう。
子供だから注意が必要!対策は?
幼稚園や保育園での外活動の多い子供たちは、公園やお散歩などから帰ってくると、目が真っ赤になったり、鼻水やくしゃみが止まらなくなったりといった症状が目立ちます。
特に子供は、目や鼻、顔や身体の皮膚など痒いところは我慢できずにこすってしまいますので、赤くなって腫れたりすり傷ができてしまったりします。
また、夜は症状が悪化しやすくなるので、鼻が詰まって寝られなくなり夜間にぐずついてしまったりし、睡眠不足にもつながってしまいます。
学力や記憶力などに影響が生じることも指摘されています。
こういった症状を悪化させないためにも、花粉症対策は大切です。
まず第1に、できる限り花粉を体内に取り込ませないことが重要です。
毎日の花粉飛散の状況を天気予報などで確認し、花粉飛散が多い日の外出はなるべく控えましょう。それでも外出しなければならない時はマスクや花粉予防のメガネを装用してください。
帰宅時に屋内に花粉を持ち込まないように、しっかりと衣服や帽子などの花粉を払い落とすといったことを心掛けましょう。帰宅後に顔を洗って肌についた花粉を洗い流すとなおよいでしょう。
次に、症状の重い場合や、花粉症か風邪かの見分けがつきにくい場合は、小児科や内科、耳鼻咽喉科などの医療機関を受診しましょう。目の症状が辛ければ眼科でもいいでしょう。
まだまだ続く花粉シーズン、出来うる対策をとりつつ、子供の花粉症の辛さを最小限に抑えましょう。
参考資料
・日本耳鼻咽喉科学会会報
鼻アレルギーの全国疫学調査2019 (1998年, 2008年との比較) : 速報―耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として
https://www.env.go.jp/press/press_01019.html
東京医科歯科大学医学部卒。同大学小児科学教室に入局、関連病院で研修後、子育て期間を経て、現在は東京都内、埼玉県内のクリニックに勤務。日々こどもの診療に奮闘中。自然科学全般に興味があり、気象予報士の資格も取得。