1年で最も寒いこの時期。酒蔵では、低温を利用した酒の仕込み、「寒造り」が盛んに行われています。そして、立春には年に一度の縁起酒、「立春朝搾り」が造られます!
このコラムでは、立春朝搾りや日本酒を楽しむ豆知識をご紹介します。
日本酒の寒造りと火入れ
日本酒の酒蔵では、「寒造り」といって1年でも寒さの厳しい12月から翌年2月頃に酒が仕込まれます。日本酒はもともと四季醸造といって年間を通して造られていましたが、江戸時代半ばから寒造りが主流になっていきます。江戸時代半ばに、米の凶作によって酒造が制限されたことなども理由にありますが、気温が低い環境は発酵する際に雑菌が少なく、酵母の活動も活発になるため、日本酒造りに適しています。
2月から3月頃になると、お酒は搾り始められます。一部のお酒は“新酒”として、消費者に届けられますが、この時に“火入れ”という過程を行うものと行わないものがあります。火入れとは60~65℃ぐらいの温度で加熱して殺菌することで、通常は“貯蔵前”と“瓶詰前”のタイミングで2回行います。どちらか一方のみ行う場合は名称が変わり、火入れを一切しないのが生酒です。
1回目の火入れのみを行ったもので、秋に出荷される「ひやおろし」が有名です。
・2回目(瓶詰前)の火入れのみ→生貯蔵酒
搾りたての日本酒を、加熱処理をしないで低温で貯蔵し、出荷時にのみ加熱処理をします。
・火入れが0回→生酒
もろみを搾っただけで、一切加熱処理をしない日本酒です。
日本酒には賞味期限の記載がありませんが、一般的に、火入れを2回した未開封のもので、製造日より1年ほどであれば、味わいが変わらずに美味しく飲めるようです。火入れをしない生酒はさらに短くなります。また、開封後はできるだけ早めに飲み切り、味わいが変わってしまったものは料理酒などにしてもよいでしょう。
立春朝搾りとは?
立春朝搾りは、立春の朝に搾られる生酒です。この日に最高の状態に仕上がる必要があるため、杜氏泣かせのお酒で、大吟醸より神経を使うとも言われるそうです。
出荷前には神社でお祓いされ、立春朝搾りに関わるすべての人の無病息災・家内安全・商売繁盛が祈願されます。とても縁起のよいお酒で、味わいは搾りたてでフレッシュなのが特徴です。
立春朝搾りの購入方法
2023年の参加蔵元は、北海道から九州まで全国で43蔵です。
立春朝搾りは、蔵元の近隣にある日本名門酒会加盟の酒販店の方が直接蔵まで行き、出荷作業を手伝って持ち帰ります。その性質から地域限定酒で、予約分しか取り扱わないことがほとんどです。
通販を行っている酒販店もあるようですが、当日には手に入らないでしょう。
<購入方法>
① まずは、立春朝搾りを取り扱う酒販店を探しましょう。
日本名門酒会の特設ページに、参加蔵元と買える店舗リストがまとまっていますので、こちらから確認すると簡単です。
日本名門酒会ホームページより引用
② 購入したい銘柄と、取り扱い店を確認したら、電話で問い合わせるか、お店に行って予約しましょう。メールなどで予約できる店舗もあるようです。
予約締切は1月25日(水)です!
③ 立春当日になったらお店に予約した商品を受け取りに行きましょう。
予約をし忘れた方も、運が良ければ若干数置いてあるかもしれませんので、一度問い合わせてみてください。また、飲食店で取り扱っていることもありますので、口コミやSNSなども駆使してお店を探してみましょう!
立春朝搾りの美味しい飲み方は?
立春朝搾りは“生酒”ですので、一般的には“冷や”で飲むのに適しているとされます。ただ、寒さの厳しいこの時期は燗酒も捨てがたいですよね。ぜひ、いろんな温度で飲み比べてみましょう。温度を変えることで、日本酒は香りや風味が変わるんですよ。
ちなみに“燗”や“冷や”といっても、下の画像のように、温度によって名称が異なります。
NPO法人FBO(料飲専門家団体連合会)によると、日本酒を冷やすのに一番早い方法は氷水に浸けることで、ボトルの首まで氷水に浸けると1分で1℃程度下がるそうです。反対に、温める場合は湯せんが理想的で、80℃ぐらいのお湯を用意して、徳利や銚子、ちろりなどを首まで浸けておくと、材質や大きさによっても異なりますが2~3分で40~50℃ぐらいに温まるそうです。
アルコールはお湯より沸騰する温度が低いので、温める際は注意が必要です。
<引用・参考>
・「酒仙人直伝 よくわかる日本酒」
発行元:NPO法人FBO(料飲専門家団体連合会)
協力:唎酒師認定団体:日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)
・日本名門酒会 お酒の歳時記
https://www.meimonshu.jp/modules/xfsection/article.php?articleid=377