【防災週間vol.5】線状降水帯とは?災害から命を守る行動を考える

ここ数年、線状降水帯による災害のニュースが数多く報じられるようになっています。平成29年7月九州北部豪雨や平成30年7月豪雨では、線状降水帯による記録的な豪雨によって、多くの人命が奪われ、家屋にも甚大な被害がもたらされました。線状降水帯による災害は、急速に危険度が高まる可能性があるため、発生してからでは避難が困難になってしまう側面があります。一人一人が命を守るために、正しい知識と必要な行動を考えていきましょう。

線状降水帯とは

線状降水帯とは、発達した積乱雲が列になって次々と発生することで線状に並び、幅20~50km、長さ50~300km程度にも及んだ降雨域です。積乱雲一つ一つの寿命は1時間程ですが、新たな積乱雲が発生することで時に数時間ほぼ同じ場所を通過・停滞し、大雨や集中豪雨を引き起こします。
発生しやすい条件は、暖かく湿った風が吹き、その風が山の斜面や前線とぶつかって上昇することや、上空に一定方向の風が吹いていることなどがあります。梅雨や台風の時期は、これらの条件が揃いやすいと言えるでしょう。

過去の線状降水帯による災害
-平成29年7月九州北部豪雨-

平成29年7月九州北部豪雨では、福岡県朝倉市で1時間に129.5mmという恐怖を感じるような雨が降り、記録的豪雨となりました。河川の氾濫に加え、同時多発的に山腹崩壊が発生し、大量の土砂や流木が流出するなど、過去に例のない被害がもたらされました。
この災害を引き起こした線状降水帯は、福岡県と佐賀県の県境にまたがる300~800m級の山々で積乱雲が繰り返し発生し、それらが発達しながら東へ移動することで長時間維持されました。朝倉市をはじめとする福岡県や、さらに広い範囲でみると九州は、地形的に大雨災害の起こりやすい場所です。それは、東シナ海側や太平洋側は広く開けていて、さらに本州で最も西に位置するため暖かく湿った空気が真っ先に流れ込むことや、南北には九州山地をはじめとする山々がそびえ立ち、上昇気流が起きやすいことが要因です。

難しい線状降水帯の予測

今年の6月から、気象庁は線状降水帯による大雨の可能性の予測を開始しています。線状降水帯の発生するおそれがある場合、半日から6時間前までに、「関東甲信」や「九州北部」など11のブロック単位で情報が発表されます。気象庁では、海上観測や気象レーダーの強化を進めていますが、現在の予報技術では、線状降水帯の正確な予測は難しく、気象庁が試算した線状降水帯発生の的中率は、全国で2回に1回、地方単位では4回に1回程度にとどまり、精度面で課題があります。情報が発表されても、必ず線状降水帯が発生するとは限りませんが、災害が発生する前に避難する時間を確保できることに意味があります。「きっと大丈夫だろう」と他人事に捉えるのではなく、災害から命を守るために我が事として考えてください。

大雨災害から命を守るために役立てたい情報

気象庁は、線状降水帯の予測精度の改善を進めていて、令和6年には県単位で半日前から、令和11年には市区町村単位で半日前からの情報提供を目指しています。また、気象庁は、線状降水帯の予測以外にも、大雨災害に関する様々な情報を発信しています。線状降水帯や大雨などが予想される場合は、気象庁のホームページなどで最新の情報を確認するようにしてください。万が一、すでに災害が発生し、外へ避難することが困難な場合は、家の中でより安全な場所(川や崖から離れた部屋・2階以上の部屋)へ移動しましょう。

<参考>
・気象庁HP 線状降水帯に関する各種情報
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/kishojoho_senjoukousuitai.html