例年では、7月から10月上旬にかけて日本は台風シーズンとも呼ばれ、台風の接近数・上陸数が多くなる時期です。このコラムでは、台風の基礎知識について気象予報士が解説していきます!
台風と熱帯低気圧の違いは?
台風と熱帯低気圧の違いは風の強さにあります。
どちらも熱帯や亜熱帯で発生した低気圧のことですが、中心付近の風速が17.2m/sを超えたものを『台風』と呼びます。暖かい海から大量の水蒸気をエネルギーとしていて、反時計回りの渦をまくことで発達していきます。このため、発達している台風は眼を伴い、全体的に形が丸くなります。
一方、温帯低気圧は、熱帯よりも北の地域で発生し、性質の異なる暖かな空気と冷たい空気がぶつかることで発生します。このため、前線を伴い、形もいびつとなります。前線の種類については、こちらのコラムで詳しく解説しています。
進路図の見方とは?予報円が大きい=大きい台風ではない
台風の発生が予想される場合や、発生している場合は、台風進路図を気象庁のホームページから確認することができます。それぞれのワードを確認していきましょう。
① 予報円(白い破線の円)
予報円とは台風の中心が到達すると予想される範囲になり、この円の内側に台風の中心が入る確率が70%となります。
予報円が大きい台風は、台風自体が大きくなるわけではなく、進路が不確実ということになります。また、時には台風の進路が大きく変わり、必ずしもこの線に沿って進むわけではありません。
② 強風域(黄色い太い実線の円)
風速(10分間平均風速)が15m/s以上の強風が吹いている場所となります。地形の影響がない場所に吹く可能性のある範囲が示されています。
③ 暴風域(赤色の太い実線の円)
風速(10分間平均風速)が25m/s以上の暴風が吹いている場所となります。地形の影響がない場所に吹く可能性のある範囲が示されています。
④ 暴風警戒域
台風の中心が予報円の内側を進んだ場合に5日先までに暴風域に入るおそれのある範囲全体が示されます。
予報円が大きくなると、台風が大きくなるとイメージしがちですが、実際は進路が不確実でコンパクトな台風が急激に接近する可能性もあります。予報円が大きい場合は、朝や夕方などこまめに台風の進路を確認することが大切です。
大きさ・強さの基準とは?
台風の情報をテレビやネットなどで見聞きする場合、「大型で」「非常に強い」勢力の台風●号は・・・などの表現をすることがあるかと思います。
台風の大きさと強さなどの勢力は、気象庁で定義が決められています。
台風の大きさは、強風域の半径で決められます。
大型の台風では強風域の半径が500km以上、超大型となると半径800km以上となります。超大型の台風では、日本の本州がすっぽりと収まるような大きさで、強い風が広域で吹く台風ということになります。
強さは最大風速(10分間平均風速の最大値)で区分されています。
「強い」台風は風速33m/s以上44m/s未満、「非常に強い」台風は風速44m/s以上54m/s未満、「猛烈な」台風は54m/s以上となります。
猛烈な台風の中心付近では時速200km前後の風が吹いていて、家が倒壊したり、送電塔のような鉄骨の建造物でも変形するようなものも出てきたりするため、接近する場合は最大級の警戒が必要です。
防災グッズを見直して早めの備えを!
近年では、2019年10月12日から13日に接近した台風19号は「大型」で「強い」台風で伊豆半島に上陸し、関東や東北南部を北上し、災害の爪痕を残しました。7月から10月中旬にかけては、本州付近に台風の接近するケースが多くなります。
まずは非常用持ち出し袋の中身を確認しましょう。
災害発生から3日は特に生活に必要なものが手に入りにくくなります。最低でも3日分の飲食料や衛生グッズ、救急用品に加え、性別や年齢、持病の有無に合わせて、内容を検討してください。
また、保存食は災害時では慣れた味のほうが気分も落ち着くため、いつも買い置きしている食品を多めに買う「ローリングストック」で循環させることがオススメです。普段から多めに購入し、使った分は買い足していくことで、いざというときの賞味期限切れを防ぐことができます。
<参考>
・気象庁「台風とは」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-1.html
・気象庁「台風情報の種類と表現方法」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/7-1.html
・気象庁「台風の大きさと強さ」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-3.html
・気象庁「台風の発生、接近、上陸、経路」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-4.html