9月4日はクラシック音楽の日です。「ク(9)ラシ(4)ック」の語呂合わせから、より多くの人にクラシック音楽に親しんでもらうことを目的に制定されました。
このコラムでは天気を題材とした秋におすすめのクラシック音楽を厳選して紹介します!
天気がテーマだと何の題材が多い?
天気を題材としたクラシック音楽はたくさんありますが、大まかには「四季・季節の移ろい」、「嵐・雷雨」、「雨」、「風」、「太陽・光」「雪・冬景色」が挙げられます。
その中でも、「嵐・雷雨」、「雨」、「雪や霧」、「太陽・朝・光」が特によく扱われていて、タイトルに「雨」「嵐」が直接入っているものもあれば、《四季》や《田園》のように、場面描写の一部として出てくる曲もあります。
夏の終わりを思わせるクラシック曲の紹介
・ラヴェル《なき王女のためのパヴァーヌ》
ラヴェルは1875年にフランスで生まれた作曲家です。
《なき王女のためのパヴァーヌ》は、哀愁を帯びた旋律が印象的なピアノ曲です。
なきとは亡くなったという意味もありますが「過ぎ去った」という意味があり、パヴァーヌは16世紀から17世紀にかけて、ヨーロッパの宮廷で普及していた舞踏です。
「昔スペインの宮廷で小さな王女が躍ったような舞踏」という意味があります。
この曲は、スペインの風習や情緒を懐かしむ気持ちや感情を表現する曲となっています。
現代に舞台を移し、スペインの夏はどのような暑さかというと、地域によって気温差が大きいですが、地中海沿岸のバルセロナや内陸部のマドリード、南部のグラナダでは、夏は乾燥しているものの暑さが厳しくなります。近年は熱波の影響で、スペインもかなりの暑さとなっていますが、夏の終わりは暑さも和らいで、朝晩は少し涼しく感じられる日もあり、日本の夏の終わりと似ているかもしれません。
ピアノのゆったりとした旋律は夏の終わりの切なさを感じさせ、疲れを癒してくれます。
秋の雨を思わせるクラシック曲
・しとしと降る静かな雨~ショパン《雨だれ(前奏曲 作品28-15)》~
ショパンの《雨だれ》は、ピアノの透明感のある響きが印象的です。
ピアノの音色は一定のリズムで繰り返され、雨がしとしとと降る様子や時折強く打ち付けたり、弱まったり強弱を繰り返す様子を表現しています。
日本では「秋霖(しゅうりん)」「秋の長雨」「すすき梅雨」などの言葉があるように、10月頃にかけては、長い雨の季節となることが多くなります。夏の空気と秋の涼しい空気がせめぎ合い、日本付近に前線が停滞します。これを秋雨前線と呼び、長雨をもたらします。
・台風のような激しい雨 ~ベートーヴェン《交響曲第6番「田園」第4楽章「雷と嵐」》~
《交響曲第6番「田園」》は、ベートーヴェンが名づけた唯一の交響曲で、第1楽章「明るい気分で田園地方に到着した喜び」、第2楽章「小川のそばの情景」、第3楽章「農民の楽しい集い」、第4楽章「雷と嵐」、第5楽章「牧歌~嵐の後の喜ばしい感謝の歌」の5楽章で構成されています。ベートーヴェンが愛したウィーンの郊外のハイリゲンシュタットで作曲され、自然の情景を描いた作品として知られています。
第4楽章「雷と嵐」では、嵐の前の静けさと嵐の激しさを、見事に表現しています。
静けさは、低音で弦を細かく震わせること(トレモロ)で、嵐の前の不気味さを表しています。
ヴァイオリンの慌ただしい走句は迫りくる嵐を表現し、管楽器も含めた全合奏では、襲来した嵐の激しさを表現しています。
ヴァイオリンの急速な動きは打ち付ける雨風を連想させ、ティンパニーの連打は激しい雷鳴を彷彿とさせます。コントラバスの低温の響きは木々が揺れるような風を表現しているようです。音の緩急と強弱で、嵐になる前の静けさや、激しい雨風が忠実に表現されています。
ただ、激しい嵐は長くは続かず、徐々に弱まり、オーボエの明るくゆったりとした音色で嵐の終わりを告げ、第5章の牧歌につながります。
秋を題材としたクラシック曲
・ショパン《練習曲作品25第11番 木枯らし》
1836年にショパンによって作曲されたピアノ独奏曲です。
右手で一音ずつ順番に弾いていくことで、北風が強弱を伴って吹き、紅葉が晩秋の寒空を舞う様子を表現しています。
また、左手の旋律は、もの悲しい心情をあらわし、右手の演奏と合わさることで、冷たい北風の吹く情景が鮮やかになります。
日本では秋から冬にかけて、西高東低の冬型の気圧配置となると太平洋側では乾燥した北よりの風が吹き、その中でも晩秋から初冬にかけて吹く、北よりの強めの風が木枯らしと呼びます。
特に話題になる木枯らし1号は、東京地方と近畿地方で発表されます。昨年2024年は東京地方と近畿地方ともに11月7日に発表されましたが、近年では条件が揃わず、木枯らし1号が観測されなかった年もあります。
まだまだ暑さが続きますが、「芸術の秋」は季節や天気をモチーフにしたクラシック音楽を楽しんでみてはいかがでしょうか?