気温が徐々に上がり春らしさも感じられますが、この時期に雪が多く積もっている地域で注意したいのは雪どけによる災害です。
気象予報士が防災上の注意点を解説します。
雪どけによる災害「融雪災害」とは?
融雪災害(ゆうせつさいがい)とは、大量に積もった雪が急激にとけて発生する災害のことです。
多くの種類がありますが、急激な雪どけにより川の増水や土砂災害が発生したり、時には道路が冠水したりします。また、斜面ではなだれが起きやすく、屋根からの落雪やツララにも注意が必要です。
どんな天気や気温のときに注意が必要?
融雪による災害が発生しやすい条件は、まず大量の積雪があることが前提となります。
多雪地では、①南風などにより気温が大幅に高くなるときや、②まとまった雨によって雪どけが急加速します。
多雪地では10cm以上の積雪が1日で減るような場合もあり、大量の雪が一気にとけるため注意が必要です。
雨が降っていなくても雪どけによる川の増水に注意
雪どけが原因となって土砂災害や川の増水などの災害のリスクが高まる日もあります。
まずは、2023年を例に、日本海側を流れる信濃川(しなのがわ)と太平洋側を流れる利根川(とねがわ)の流量を確認してみましょう。
利根川は6月の梅雨時期など雨の多いシーズンに流量が最大となります。一方、信濃川は6月から7月の梅雨シーズンも多いものの、最大となるのは3月で、これは雪どけが原因です。
雨や雪が降っていれば注意される方も多いと思いますが、気温が急激に上昇する日も注意が必要です。また、急激な川の上昇によって、道路など低い土地が冠水することもあります。
気象庁は、急激に雪どけが進む場合に注意を促すため「融雪注意報」を発表します。融雪注意報が発表される場合は、川や斜面の近くにお住いの方は特に注意が必要です。
春スキーや雪山に登山の場合知っておきたい!なだれの前兆現象
大型連休頃にかけて関東甲信越や東北の山沿いでは、まだオープンしているスキー場もあるため、春スキーを予定されている方もいるのではないでしょうか?
ただ、気温の上昇するこの時期は、なだれに注意が必要です。
なだれの種類や前兆現象、もしも巻き込まれてしまったときの対処法をまとめてみました。
①なだれの種類
大きく2種類があり、表層(ひょうそう)なだれは、古い積雪をすべり面として新しい雪がなだれを起こすため、厳冬期に多くなります。時速は100km~200kmに達し、その速さは新幹線並みとなります。
一方、全層(ぜんそう)なだれは、気温が上昇する春先に多くなります。斜面の硬くて重い雪が地表面をすべり面として一気に流れ落ちます。時速は40km~80kmと自動車並みです。
②なだれの前兆現象
なだれの前兆現象には大きく6つの現象があります。
・雪庇(せっぴ):
山の尾根から雪が張り出す現象。張り出しの部分から斜面に落ちる。
・巻きだれ:
なだれ防止柵からの雪の張り出し。張り出しの部分から斜面に落ちる。
・斜面が平らになっている:
地形が分からないほど平らに雪が積もる。表層なだれの危険大。
・スノーボール:
斜面を転がり落ちるボール状の雪のかたまり。多く見られるときは要注意。
・クラック(ひびわれ):
雪の裂け目から積もった雪が少しずつ動き出そうとしている状態。全層なだれの危険。
・雪しわ:
しわの模様で、積もった雪が少しずつ動き出そうとしている状態。全層なだれの危険。
③もしも、なだれに巻き込まれてしまったら
まずは、なだれに巻き込まれないよう対策を行いましょう。
なだれが発生しやすい場合は気象庁から「なだれ注意報」が発表されます。ハザードマップを確認のうえ、危険な場所には近づかないようにしましょう。
万が一、なだれを見かけた場合は、決して近づかず、市町村役場や警察、消防へすぐに通報してください。
・なだれが自分の近くで起きた場合
流される人がいれば見続け、巻き込まれ地点と見えなくなった地点を覚えておきましょう。なだれが止まったあとは巻き込まれ地点と見えなくなった地点に木などの目印をたて、なだれビーコン(無線機)などを使って捜索し、見つけた場合は救急処置を行いましょう。
・自分自身が流される場合
なだれに対して水平方向に逃げましょう。仲間が巻き込まれないよう知らせ、雪の中を泳いで浮上するようにしてください。雪が止まる場合は、口の前に手でなるべく空間を作り、雪の中から上を歩く人の声が聞こえた場合は大声を出すようにしましょう。
<参考・引用>
・気象庁「気象警報・注意報の種類」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/warning_kind.html
・国土交通省「水文水質データベース」
http://www1.river.go.jp/
・政府広報オンライン「雪崩(なだれ)は最大で時速200kmものスピードに!雪崩から身を守るためには?」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201311/4.html
・国土交通省:砂防「雪崩防災」
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/nadare.html