日本には春の雨の情景を表した言葉が数多くあります。このコラムでは春の雨の特徴や、春の雨の名前について紹介します。
春の雨の特徴とは?季語も解説
・春の雨は「しとしと降る長雨」、時には「横殴りの雨」も
「春に3日の晴れなし」ということわざがある通り、春は天気の変化の大きい季節です。
冬型の気圧配置が続きにくくなり、春になると日本付近を移動性高気圧と低気圧が交互に通過するようになります。南から暖かな空気が流れ込むようになり、雪の多い地域でも降るのは雪ではなく雨となり、積もった雪をとかします。
例年では3月下旬から4月前半にかけて、本州の南岸に前線が停滞して、東・西日本はくもりや梅雨に似た、しとしと降る長雨の天気になります。
時には、低気圧が発達しながら、日本海や本州南岸を通過すると、風が強まり横殴りの雨となって、雷や突風、ひょうなど激しい現象を伴うこともあります。
・春の季語とは?
そもそも季語とは、主に俳句や連歌で用いられる、春夏秋冬の季節を表すための言葉です。
季節ごとの情景や、人の心情を表した言葉で、俳句を詠むときだけでなく手紙を書く際にも使われています。春の季語の中には雨や雲に関する言葉も数多くあり、雨についての表現をこれから紹介していきます。春の雲の種類や特徴ついてはこちらのコラムで解説しています。
春の雨の名前
春の雨の情景を表す言葉です。
菜種梅雨(なたねづゆ)
3月下旬頃に梅雨のように前線が停滞し、降る雨のことです。
詳しくはこちらのコラムから。
雪解雨(ゆきげあめ)
「雪解雨(ゆきげあめ)」は、冬に積もった雪をとかすような雨のことを指します。雪をとかすだけではなく、雪どけ水が草花や木々の芽吹きを促すような、春の訪れを感じさせる印象的な雨です。
そのメカニズムは、立春を過ぎて低気圧が日本海を通過し、南風が強く吹くようになると、気温が上がり、雪国でも降るのは雪ではなく雨が降るようになります。
手紙やビジネスでも使われる時効の挨拶でも「雪解雨」は使用でき、「雪解雨の候」は“雪をとかす春の雨が降る頃になりましたね”という意味です。2月4日頃から2月18日頃の立春の時期に使われます。
小糠雨(こぬかあめ)
「小糠雨(こぬかあめ)」は、雨が霧のように細かく、非常に小さな雨粒として降る雨のことを表します。糠(ぬか)とは、玄米を精白するときに出る、胚芽と種皮とが混ざった粉のことを指します。
「小糠雨(こぬかあめ)」は、霧雨のような静かな雨を指すことから、季節としては春を連想させる雨ですが、実は春限定の言葉ではなく四季を問わず使える表現です。
花時雨(はなしぐれ)
「花時雨(はなしぐれ)」は、桜の咲く3月下旬頃から4月上旬頃に降る軽やかでしっとりとした雨を指します。
花時雨の「時雨」は、冬の季語として使われて、晩秋から初冬にかけて日本海側で降る冷たい小雨のことを指しますが、時雨の頭に「花」が付くことで春の季語となり、桜が満開の頃にしとしと降る、春の儚さを連想させる雨の表現になります。
桜流し
「桜流し」は桜流しは桜の花びらを散らしてしまう雨を表す言葉です。
「桜流し」の雨の特徴は、桜の花が満開を迎え、花が散り始めるときに降る比較的優しい印象の雨です。
桜の花が雨で流れ落ちていく様子をイメージしていて、春の儚い美しさを感じさせます。
美しい響きの言葉ですが、桜の時期の終わりを感じる感傷的な表現でもあります。
発火雨(はっかう)
発火雨(はっかう)とは、二十四節気の清明(4月4日頃)の頃、しとしと降り注ぐ雨のことを言います。
この時期の暖かな雨によって植物の生長が促され、一雨降るごとに緑がみずみずしく育っていきます。
発火雨は、桃の花に降る雨が遠目で見ると火花を散らしているように見えることが語源とも言われています。