やまじ風や清川だし、広戸風ってどんな風?気象予報士が解説

日本三大悪風って何?

地形が複雑な場所では局地的に風が強まることがあります。全国各地に局地風と呼ばれる風が存在し、その中でも特に、愛媛県の「やまじ風」、山形県の「清川だし」、岡山県の「広戸風」日本三大悪風とよばれています。このコラムでは三大悪風の特徴と、それらの対策方法について解説します。

それぞれの発生メカニズムや注意の必要な時期を紹介!

【愛媛県】やまじ風 最大瞬間風速は60m/sを超えることも

やまじ風(愛媛県)

やまじ風は、法皇(ほうおう)山脈を越えて、愛媛県の東部に位置する四国中央市を中心に吹く強い南風です。
やまじ風は「おろし風」の一種です。おろし風とは漢字にすると「颪」と書き、山から吹き下ろす風のことを指します。有名なものでは、国内では岡山県の広戸風、兵庫県の六甲おろしがあり、世界的には地中海のアドリア海に吹き抜けるボラや北米ロッキー山脈のチヌークなどがあげられます。
最も発生しやすい季節は春と秋で、低気圧が発達したり台風が接近したりするときに発生し、低気圧や台風が日本海を通過したり、四国や九州の西側を通ったりする場合に強いやまじ風が吹きます。
最大瞬間風速は60m/sを超える事例もあり、農業への影響や家屋や電柱が倒壊するほか、人的被害がもたらされることもあります。
やまじ風はフェーン現象により強風とともに気温が上昇します。

【山形県】清川だし 1週間強風が続くことも

清川だし(山形県)

清川だしは、山形県北西部に位置する庄内平野の最も東側にある清川で吹く局地風です。
清川だしの「だし」とは陸から海に向かって吹き、船出に便利な風であることからついた風の名前で、日本には北海道寿都(すっつ)の寿都だし、新潟県荒川流域の荒川だしなどがあります。
清川だしのメカニズムは複雑で、山を越えるときに吹く「おろし風」なのか、谷の出口で吹く「地峡風」なのか、研究者の間でも議論がされています。
吹く季節は春から秋が多く、太平洋に高気圧があり、日本海に低気圧があるような気圧配置のときに吹きます。東南東から吹く風が、奥羽山脈・出羽丘陵を越えて、最上川の渓谷付近で風が集まり、強まります。最大風速は20m/sに達し、瞬間的には30m/sを超え、吹き始めると1週間続くこともあります。
清川だしは、吹くことで気温の下がるときと気温が上昇するときがあり、気温の上がるときは農業に大きな影響を与えます。一方、長く続く風を利用し、風力発電も推進されています。

【岡山県】広戸風 春と台風シーズンは要注意

広戸風(岡山県)

広戸風は、那岐山(なぎさん)の南麓の岡山県北部の奈義町や津山市東部などの地域で吹く局地風です。
日本海から鳥取県の千代川に沿って風が吹き込み収束し、那岐山を越えたときに吹き下ろす「おろし風」の一種です。1997年6月28日の台風8号の接近時には、奈義で最大瞬間風速は39m/sを記録し、農作物に多大な被害が出ました。発達した低気圧や台風が岡山県の南側を通過するときに、広戸風が発生しやすいため、近くにお住まいの方は春と台風シーズンは注意が必要です。

三大悪風の対策について

局地風の吹きやすい気圧配置が予想されるときは注意が必要です。低気圧の発達しやすい春と秋、さらに台風が発生し、接近が予想されるときは注意してください。
気象台や天気予報で発表される強風の情報を確認し、情報が発表されている時は、植木鉢や自転車など倒れやすい物は固定したり家の中へしまいましょう。
また、警報級の風が予想されているような場合は、電柱や家屋が倒壊するおそれもありますので、車などは車庫にしまうなどの対策を行い、外出を控えてください。

<引用・参考>
・気象庁「過去の気象データ検索」
https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/index.php

・2020年度日本地理学会春季学術大会
清川だし吹走時の気温変化とその形成メカニズム
小野寺 平 、日下 博幸
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajg/2020s/0/2020s_201/_article/-char/ja/

・第19回 風工学シンポジウム論文集 p19-24 2007/03/13
山形県庄内平野の強風「清川だし」の発生機構について
力石國男、蓬田安弘、石田祐宣
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kazekosymp/19/0/19_0_19/_pdf

・岡山地方気象台「広戸風について」
https://www.jma-net.go.jp/okayama/shosai/kisyoukaisetsu/hiroto/hir