【災害振り返り】関東を直撃した令和元年房総半島台風から5年 普段からできる台風への備えとは

今から5年前の2019年(令和元年)9月9日は、台風15号が関東地方に上陸しました。この台風は令和元年房総半島台風と命名され、千葉県内のゴルフ練習場の鉄柱が倒れるなど、暴風によって甚大な被害がもたらされました。
先月2024年8月も台風7号や台風10号の接近・上陸によって、計画運休が行われるなど交通網に影響が出ましたが、災害への意識は時間の経過とともに低くなりがちです。台風シーズンを迎えている今このタイミングで、備えを見直していきましょう。

令和元年房総半島台風とは

令和元年房総半島台風経路図

令和元年房総半島台風とは、2019年(令和元年)9月5日に小笠原諸島の南鳥島近海で発生した台風15号のことです。9月7日午後に強い勢力で小笠原諸島に接近し、8日午後に伊豆諸島に接近した後、次第に北よりに進路を変えて、9日3時前には三浦半島付近を通過し、9日5時前には強い勢力で千葉市付近に上陸しました。関東地方を中心とした19地点で最大風速・最大瞬間風速の観測史上1位の値を更新し、暴風によって甚大な被害をもたらしました。

令和元年房総半島台風の原因とは

2019年は、「令和元年房総半島台風(台風15号)」と「令和元年東日本台風(台風19号)」という2つの台風が9月から10月にかけて関東地方を直撃し、いずれも被害が大きくなりました。
台風15号は一時的に非常に強い勢力、台風19号は大型で猛烈な勢力へとなっていて、台風15号は風による被害、台風19号は記録的な大雨による被害が大きかったのが特徴です。
台風は海からエネルギーをもらって発達します。2019年は海面水温が平年より高く、台風が発達しやすい条件が揃っていました。また、夏の間張り出している太平洋高気圧は、秋になると勢力が弱まります。2019年も太平洋高気圧の張り出しが弱まっているタイミングと重なったため、台風が接近・上陸に繋がりました。

また、台風15号が千葉県など台風に向かって右側の地域で被害が甚大となったのは、台風の危険半円に入ったためと考えられます。台風の進行方向の右側は、①台風に吹き込む反時計回りに吹く風と、②台風自体を動かしている風が、同じ方向に合わさるため、風が強まりやすいことが知られています。危険半円は荒天になりやすいため、特に注意が必要です。

令和元年房総半島台風による被害とは

城南島海浜公園

令和元年房総半島台風は、大雨だけでなく記録的な暴風による被害が大きかったのが特徴です。
2019年12月23日時点の消防庁の調べで、死者は3名(千葉県2名、東京都1名)、重傷者は13名、軽傷者は137名出ており、住家は、全壊が391棟、半壊・一部損壊が76,483棟、床上・床下浸水が230棟という甚大な被害がもたらされました。また、送電線の鉄塔や電柱の倒壊などの影響で、首都圏を中心に最大約93万4,900戸の大規模な停電が発生し、復旧にも時間を要しました。
千葉県内のゴルフ練習場では鉄柱13本が倒れ、近隣の住宅16軒が被害を受けました。この撤去作業は当初の予想よりは期間が短縮したものの、およそ2か月後の11月13日までかかっています。

台風への対策のポイントとは

①連絡方法や手段を確認する

災害版伝言ダイヤル

台風の暴風により停電が発生したり、電話が通じにくくなったりすることが考えられます。離れた場所にいる家族と連絡が取りにくくなるケースが考えられるため、災害版伝言ダイヤルの使い方を確認し、事前に待ち合わせをする場所を決めておくとよいでしょう。
また、「三角連絡法」という手段があり、遠くに離れた場所に住むご家族や親戚、ご友人の家を連絡先に決め、そこを中継点にして家族の安否確認をとる方法もおすすめです。

②ハザードマップを確認してリスクを把握する

ハザードマップ

市町村が発行しているハザードマップで、自宅や会社、学校などの周辺はもちろん、避難場所や避難経路を確認しましょう。内水氾濫のハザードマップがない地域は、洪水のハザードマップや過去の浸水被害を確認してみてください。
ハザードマップをもとに「タイムライン(避難行動計画)」を相談しておくのもおすすめです。5段階の警戒レベルに合わせ、どのタイミングで避難を始めるのか検討してみましょう。

③避難先や避難経路を確認する

避難経路

自宅はもちろん、学校や職場など、自分の活動圏内の避難先は事前に把握しておくことが重要です。また、避難経路が安全であるのかも、前もって確認しましょう。

④非常用持ち出し袋の点検する

非常用持ち出し袋

災害発生時は、生活に必要なものが手に入りにくくなるため、「非常用持ち出し袋」と「家庭用の生活必需品」が重要になります。
非常用持ち出し袋は、3日分の飲食料や衛生グッズ、救急用品などに加え、性別や年齢、持病の有無などに合わせて内容を検討してください。また、家庭用の生活必需品の中でも保存食は「ローリングストック法」で循環させるのがオススメです。普段から食材を多めに購入し、使った分は買い足していくことで、いざという時の賞味期限切れを防ぐことができます。

 

<参考・引用>
・気象庁 「令和元年房総半島台風(台風第15号)」
https://www.jma.go.jp/jma/press/2002/19a/20200219_typhoonname_ref.pdf

・内閣府 「令和2年版 防災白書|特集 第1章 第1節 1-2 令和元年房総半島台風による災害」
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/r02/honbun/0b_1s_01_02.html