7月から8月は暑さに加えて紫外線の強さもピークです。紫外線について正しい知識と対処法を知って、夏の赤ちゃんとのお出かけを楽しみましょう。
紫外線が強い時期はいつ?
7月から8月が紫外線の強さのピークです。紫外線の強さの一つの指標であるUVインデックスが茨城県つくば市で観測された推移グラフによると、7・8月のほとんどの日で「非常に強い」紫外線が観測されています。さらに8月は「極端に強い」を観測している日もあります。
紫外線が「非常に強い」や「極端に強い」ランクとは、日中の外出は出来るだけ控えたほうがよく、必ず長袖シャツや日焼け止め、帽子を利用した方が良い強さといわれています。夏は暑さだけではなく、紫外線からも身を守ることが大切です。
赤ちゃんの紫外線リスク
赤ちゃんの皮膚は大人の皮膚と比べてとても薄く、バリア機能も未熟でとてもデリケートなため、紫外線の強い夏は特にしっかりとケアをしてあげたいですね。これから、紫外線を浴びることで赤ちゃんにどんなリスクがあるかお伝えします。
日焼けはやけどと同じ!
日焼けはやけどと同じ症状です。日焼けの中でも、紫外線にあたると数時間後から肌が赤くなるような症状はサンバーン(sunburn)といい、肌が炎症を起こし、やけどと同じ皮膚の急性炎症反応です。日焼けを繰り返すことで皮膚の弾力性が失われるなどの老化が起こり、将来的に、しわやしみなどの色素沈着の発生や皮膚の病気に繋がってしまいます。
頭皮や目も日焼けする
肌だけでなく、頭皮や目も日焼けします。頭皮が日焼けすると乾燥してカサカサになったり、炎症が起こることがあります。また、赤ちゃんの目はレンズが大人よりも透明なため、大人の目よりも多くの紫外線を透過し目の奥までダメージを受けやすいです。目が紫外線のダメージを受けると、充血して赤くなり、ひどい場合は、痛みを伴い一時的に視力が低下します。また、赤ちゃんや子どものときに浴びた紫外線によって、白内障が早期に発症したり、将来年をとってから黄斑変性症が進行することがあります。長時間外出する時や海や山など紫外線の強い場所では、目を守るためにサングラスは有効です。ただ、小さなお子様はサングラスをかけ続けることは難しいかもしれません。つばが広く、首の後ろまでカバーのあるタイプの帽子を被せてあげることで目や頭全体を紫外線から守ることができます。帽子を嫌がるお子様には、子供向けのスプレータイプの日焼け止めもありますので使用を検討してもいいでしょう。
赤ちゃんも日焼け止めは使えるの?ママも一緒に使える日焼け止めはある?
日焼け止めの使用は生後6か月からが安全!
赤ちゃんが日焼け止めを使うのは、生後6か月以降が安全です。
赤ちゃんの肌は、まだまだ未熟で、刺激に弱いです。特に生後3か月ぐらいまでは皮脂の分泌が多く、それによって湿疹もできやすいです。日焼け止めは生後1か月から使用ができるものもありますが、FDA(米国食品医薬品局)とアメリカ小児科学会では生後6ヶ月以降での使用が推奨されています。1歳の子どものいる筆者は、生後1か月の初めてのお出かけ前に、子供の顔に赤ちゃん用の日焼け止めを塗ったら、翌日ほっぺにニキビのような症状があらわれてしまったことがありました。「生後28日が過ぎ外出が解禁されてすぐのお出かけだから、赤ちゃんのお肌をしっかり守りたい」気持ちで日焼け止めを塗ったのですが、かえって赤ちゃんのお肌を荒れさせてしまいました。
日焼け止めの使用を控えたほうがいい、生後6か月未満の赤ちゃんの場合は、直接日差しが当たらないような工夫をしましょう。帽子をかぶせる、暑くなりすぎない範囲で通気性のよい素材の衣服で覆うなどが直接の対策です。また、衣服の色は白や淡い色が効果的です。抱っこ紐でのお出かけは、ママが日傘をさしたり、だっこ紐に日よけケープを装着したりするといいでしょう。赤ちゃんをベビーカーに乗せるときは、幌(ほろ)にサンシェードを装着する、幌を被せても日の当たってしまう身体にはケープをかけておくと安心です。なお、ベビーカーの中は、熱がこもりやすいため、通気性のいい素材を選ぶようにして下さい。紫外線が強く、暑さの厳しい10時~14時頃は外出を極力控えることもひとつの対策でしょう。
ママも一緒に使える日焼け止めはある?
赤ちゃんの日焼け対策を入念にしても、忙しさから自分の対策は疎かになっているママもいるかと思います。日常的に使う日焼け止めは赤ちゃんと一緒に使えるものだと楽ですよね。妊娠中や産後はホルモンバランスの乱れから、シミの元になるメラニン色素が増えてシミになりやすいため、ママの紫外線対策も重要です。基本的に赤ちゃんが使える日焼け止めは、ママも使えると思っていいでしょう。赤ちゃんと一緒に使える日焼け止めのポイントをまとめました。
・紫外線吸収剤フリーのもの
紫外線吸収剤は紫外線を吸収し、熱や赤外線などのエネルギーに変化させて放出します。紫外線吸収剤のメリットはUV効果が高く、透明色で肌になじみやすい傾向があります。一方で、肌に対する刺激やアレルギー反応を引き起こす可能性があるというデメリットがあり、紫外線吸収剤の入った日焼け止めを、敏感な赤ちゃんの肌に使用することは、おすすめできません。ノンケミカル処方(紫外線散乱剤使用)と書いてあるものを選ぶようにしてください。
・SPF15~20、PA++
SPFやPAの値が高い日焼け止めは肌への負担が大きくなるため、日常使いにはあまりおすすめできません。近所への買い物やお散歩などのお出かけであればSPF15~20、PA++で十分でしょう。SPFやPAについての説明はこちらのコラムから。海や山へのお出かけの場合は赤ちゃんとママで使えて、効果が高いSPF20~40、PA++~+++を目安に選んで塗りましょう。日焼け止め自体の紫外線を抑制する効果はSPF15のものでは5時間ほど効果があるといわれていますが、衣服の擦れや汗や皮脂などで効果が落ちてしまうため、2~3時間をめどに塗り直すようにしてください。
・せっけんやボディソープで落とせる
SPFやPAが低く、せっけんオフの表記があるものは、せっけんやボディソープで落とせるものが多いです。ウォータープルーフ効果があるものであっても、せっけんオフの表記があるものは、せっけんやボディ―ソープで落とすことができます。
・白浮きしにくいもの
赤ちゃんが使うことのできるノンケミカル処方の日焼け止めは、一般的に白浮きしやすいデメリットがあるため、ママが赤ちゃんの日焼け止めを化粧下地として使いたい場合は、白浮きしにくいものを選ぶといいでしょう。
最近では紫外線のほかに、近赤外線やブルーライトをカットしてくれる赤ちゃん用の日焼け止めも販売されています。ポイントを押さえて、赤ちゃんと一緒に安心して使える日焼け止めを選びたいですね。
日焼けしちゃったらどうする?対処法を紹介
どんなに気を付けていても日焼けをさせてしまうこともあると思います。日焼けをさせてしまったときの対処法を説明していますので確認しましょう。
冷やす
日焼けをしてしまった箇所は冷たい水で濡らしたタオルを軽く絞り、日焼けした肌に当てましょう。保冷剤を使う場合は、赤ちゃんの肌の温度が低くなりすぎないように、布で巻くなどして肌に直接当てないようにして冷やしてください。
保湿する
日焼け後のお肌は乾燥しやすいため、赤ちゃんの肌にあった保湿剤を使って、やさしくしっかりと保湿します。夏の時期であれば、ローションや乳液、ジェルだと、付け心地が軽くべたつかないのでおすすめです。
水分補給
日焼けにより体内の水分が失われることがありますので、授乳や水分を与えてしっかりと水分補給を行いましょう。
医師の診察
患部を冷やし、しっかり保湿しても水ぶくれができたり、皮膚の赤身が強かったり、皮膚がむけたりするようなときは、皮膚科へ行きましょう。発熱や嘔吐などの全身症状を伴う場合は、まず小児科へ受診することをおすすめします。
<参考>
環境省 紫外線環境保健 マニュアル2020
https://www.env.go.jp/chemi/matsigaisen2020/matsigaisen2020.pdf
日本小児皮膚科学会 子どもの紫外線対策について
http://jspd.umin.jp/qa/03_uv.html
東京医科歯科大学医学部卒。同大学小児科学教室に入局、関連病院で研修後、子育て期間を経て、現在は東京都内、埼玉県内のクリニックに勤務。日々こどもの診療に奮闘中。自然科学全般に興味があり、気象予報士の資格も取得。