これからの季節、空から降ってくるものが雪なのか雨なのかで、必要な対策は大きく異なります。
このコラムでは、1mmの雨を雪に換算するとどのくらいの量で、重さはどのぐらいなのかを解説し、天気予報で使われる「降雪量(降雪の深さ)」と「積雪深(積雪の深さ)」の違いや雪の強さの表現、雪への備えについても説明していきます。いま一度、雪への意識を見直しましょう。
降水量1mmは気温が0℃ぐらいなら約1cmの雪
降水量1mmの雨についてはこちらのコラムで解説していますが、1mmの雨を雪にするとどのくらいなのでしょうか。
降雪量(cm)は “降水量(mm) × 雪水比(cm/mm)”で計算することができます。
雪水比(ゆきみずひ)とは、降水量に対する降雪の割合を表す指標で、雪質によって値が異なります。地上気温が低いときに降る“粉雪”はサラサラと乾いていて、雪水比はおよそ2です。一方、地上気温が高いと湿った雪となり、“ぼたん雪”の雪水比は約0.6~1.5となります。
このように、降水量から降雪量を計算するのは雪質次第なので一概にはいえませんが、目安として“降水量が1mmは気温が0℃ぐらいなら1時間で約1cmの雪となる”と考えるとよいでしょう。
また、降ってくるものが、雨なのか雪なのか、あるいはみぞれなのかは、地上の湿度や気温で決まります。上の表は“雨雪判別表”といい、地上気温が高めでも湿度が低ければ雪となる可能性があります。
1cmの雪の重さはどのくらい?
雪の重さは、雪の状態によって大きく異なります。降ったばかりの新雪は比較的軽く、重みで固まったり、とけたり凍ったりを繰り返したりするほど重くなり、ざらめ雪は新雪の倍以上もの重さとなります。
例えば、12.5㎡(2.5m×5m)の駐車スペースだとすると、新雪は1cmで37.5 kg、ざらめ雪の場合は87.5㎏の負荷がかかる計算です。新雪でも3cm積もれば100kgを超えますし、ざらめ雪は11~12cm積もると1,000kgに達します。カーポートは雪の重さで倒壊する可能性があり、積雪が多い場合は家の屋根であっても損壊することがあります。
「積雪深」と「降雪量」は何が違う?
天気予報で、雪の降った量を表現する場合、「積雪深(積雪の深さ)」と「降雪量(降雪の深さ)」という2つの表現があります。
・積雪深(積雪の深さ)とは
積もった雪の深さのことで、観測時点で地面を覆う雪の深さのことです。時間とともに重さで沈んだり、とけたりするため、降雪量の合計がそのまま積雪の深さになるわけではありません。
・降雪量(降雪の深さ)とは
一定の時間内に積もった雪の深さのことです。気象庁では、1時間前の値との差で降雪量を算出しています。
どちらも単位はcmで、最小単位は1cmです。なお、積雪の深さには、「積雪0cm」と「積雪なし」という表現があり、両者は区別されます。「積雪0cm」は、 観測場所(露場)の地面の半分以上を雪が覆っている状態で、「積雪なし」とは、雪が全くないか、あっても半分以上を覆っていない状態のことです。
雪の強さにも表現がある?
雨の強さに、“強い”や“激しい”といった表現の決まりがあるように、雪にも気象庁のルールがあります。
① 小雪
数時間降り続いても、降水量が1mmに達しない場合を小雪といい、北日本や日本海側では「雪」と表現することもあります。普段から雪に慣れていない地域では、少しの雪でも交通網に影響が出たり、転倒事故が起こったりするため、油断はできません。
② 弱い雪
降雪量が1時間でおよそ1cmに達しない雪で、小雪よりは降りますが、「降雪の深さ」や「積雪の深さ」は“0 cm”または“-”という表記になります。
1m2 の範囲(大人が傘を開いた時の面積)で新雪が1cm積もると約3kgの重さという計算ですので、“弱い”という表現でも油断禁物です。
③ 強い雪
降雪量が1時間におよそ3cm以上の雪のことです。雪に慣れていない地域では、交通網が乱れ、転倒や重大な事故につながるリスクが一層高まります。時間に余裕を持った行動やスケジュールの変更など、臨機応変な対応が必要です。
④ 大雪
大雪注意報の基準以上の雪を大雪といいます。
「大雪注意報」や「大雪警報」は地域によって発表基準が異なります。例えば、東京23区は、大雪注意報の基準が12時間の降雪の深さが5cm、大雪警報の基準が12時間の降雪の深さが10cmですが、同じ東日本でも新潟県・湯沢では、大雪注意報が12時間の降雪の深さが35cm、大雪警報が12時間の降雪の深さが60cmと6~7倍にもなります。
このほかにも、著しい災害が発生した顕著な大雪現象を「豪雪」といいます。
また、雪を伴った暴風を「暴風雪」といい、視界が悪化して時には“ホワイトアウト”になることもありますので、無理な外出は控えるようにしましょう。
大雪が予想される時はどんな対策をする?
大雪が予想される場合、事前にできる対策としては、以下の3つがポイントです。
① 除雪用アイテムの用意
除雪には、雪かき用のスコップが活躍します。ホームセンターなどで手に入りますが、雪が降った後や直前に買いに行こうとすると売り切れてしまう可能性があります。軽量のプラスチック製のものは耐久性がやや落ちますが、一度購入すれば数年は使えますので、1つは用意しておくと安心です。
② 備蓄の確認
雪が降ると交通網が乱れ、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの商品が不足したり、そもそも外出が困難になったりする可能性があります。普段から少し多めに食料品を購入して使った分を買い足していく、“ローリングストック”がおすすめです。また、長期保存できる缶詰などは、定期的に賞味期限を確認するようにしてください。
③ 車のタイヤ交換
車で移動する場合は、スタッドレスタイヤなどの冬タイヤに交換しましょう。直前になるとガソリンスタンドが混雑することもありますので、早めの対応がおすすめです。
大雪が予想される日は、自動車での移動を控えるのが第一ですが、やむを得ない場合は最新の道路情報を確認してください。また、チェーン、毛布などの防寒具、飲食料、雪かき用のスコップを常備しておくようにしましょう。
<参考>
・気象庁HP 「予報等で用いる用語」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/mokuji.html