【そらトレ】運動中の熱中症に注意! 症状や処置を熱中症予防指導士が解説

8月は暑い日が続き、運動や筋トレを行う際には、熱中症に対する対策が重要です。熱中症の初期症状や脈拍による判断方法、処置方法について熱中症予防指導士 が解説していきます。

運動中の熱中症が最も多い季節

8月は、夏の真っ盛りで気温が高くなり、体内の熱を外に逃すために多く汗をかきます。体内の水分や塩分が失われ、熱中症にかかりやすくなります。総務省のまとめる資料では、7月から8月に熱中症の救急搬送者数はピークになります。
また、こどもの場合は、夏休みの時期に当たり、外出する機会が増えるため、屋外の熱中症リスクが高まります。更に、連日の暑さによる夏バテ、睡眠不足、食欲不振などが続くと、体力や免疫力が低下し、より熱中症にかかりやすくなってしまいます。

熱中症の症状や熱射病との違い

一口に熱中症と行っても、体の中と外の暑さによって引き起こされる身体の様々な不調の総称を指していて、熱による失神やけいれん、熱射病も熱中症によって起きる障害の一つです。それぞれの症状別に解説していきます。

熱けいれん・・・

大量の発汗があるのにもかかわらず、水のみを摂取し、ナトリウム(塩分)が不足した場合に痛みを伴う筋肉のけいれんが起こるとされています。生理食塩水の補給で快方に向かいます。

熱失神・・・

運動した直後に多く、急に倒れてしまいますが、意識はすぐに回復します。身体の熱を逃がすため、末端の血管が拡がることで、脳に流れる血が減少し、意識を消失します。水分をしっかり摂取し、体温を下げ、足を高くして寝かせると良いでしょう。

熱疲労・・・

発汗が多く、全身に倦怠感があります 。涼しい場所での休憩や水分補給が有効とされています。

熱射病・・・

熱により体温調節機能が破綻した状態で、全身の多臓器不全となり、死亡率も高い非常に危険な状態です。40℃を超える体温や意識障害、全身のけいれんが特徴です。
確実に救命するには発症から40分以内に体温を下げる必要があり、冷却処置をしながら集中治療のできる病院へ搬送する必要があります。

運動・スポーツ時、前後の熱中症対策

危険な熱中症を防ぐために、運動やスポーツをするときにどのようなことに注意すればよいでしょうか。具体例を5つ挙げてみます。

①水分補給
運動中は汗をかき、体内の水分や塩分が失われます。熱中症を防止するためにこまめな水分補給を行い、脱水症状を予防しましょう。水だけでなく、スポーツドリンクや塩分を含む食品などで塩分も補給することが大切です。
②適切な服装
通気性の良い服装を着用し、日差しや風を通すことで体温調節を行います。また、帽子を使用して、直射日光を遮りましょう。
③適度な休憩
長時間の運動やスポーツの後は、こまめな休憩をとり、体を休めることが大切です。涼しい場所で休むと、体温が下がり、熱中症を予防することができます。
④運動やスポーツをする時間帯
運動をする時間帯も大きく体調に影響してきます。朝や夜の比較的涼しい時間に運動をするようにしましょう。日中の炎天下での運動やスポーツは熱中症のリスクが非常に高くなります。
⑤体調管理や食事
運動前に十分な睡眠をとり、食事をしっかりとることで、体力や免疫力を高めます。特に食事の際は、味噌汁やスープなどは、冷たい食べ物を多くとりがちな夏に身体を温め、塩分も補給できるため、 一緒に飲みましょう。食事から摂れる水分も非常に重要です。

熱中症を疑うべき初期症状 ~脈拍で手軽に判断~

熱中症を疑うべき症状として一般に下記が挙げられます。
・頭痛やめまい、倦怠感
・のぼせ、顔や手足のほてり
・汗の異常な量や汗の出ない状態
・脱水症状
これらは本人による判断なので周りからは、なかなかわかりづらいため、客観的に判断できる方法として脈拍による判断方法を紹介します。平常時の心拍数と運動時の心拍数を比べてどの程度身体に負荷が掛かっているのか(生体負荷)を確認する方法です。

①あらかじめ平常時の心拍数を測っておきます。(安静時の心拍数)
②自身の最大心拍数を計算します。(220ー年齢=最大心拍数)
③次に運動時の心拍数を測ります。(心拍数)
④自身への生体負荷を計算します。
生体負荷(%)=(心拍数ー安静時の心拍数)/(最大心拍数ー安静時の心拍数)×100

これで出てきた結果から下の図で個人の体への負荷が客観的に判断できます。この値が、60%以上の場合は、負荷が強く、熱中症などに警戒した方がよいでしょう。

初期症状を確認し、脈拍で客観的に負荷を確認して熱中症をしっかりと予防しましょう。

熱中症かもしれない人を見つけたら!

①涼しい場所に移動させる
まず、直射日光があたる場所から避難させ、涼しい場所に移動させます。室内や木陰、涼しい風の吹く場所などが適しています。
②水分を補給させる
水分補給を行い、脱水症状を改善させましょう。ただし、一度に大量の水分を摂取するのは避け、こまめに少量ずつ摂るようにしましょう。また、スポーツドリンクなどに含まれる塩分も一緒に摂取すると効果的です。
③衣服を緩める
熱中症の場合、血管が収縮して血流が悪くなっているため、衣服を緩めることで血流を改善します。
④氷や冷たいタオルで体温を下げる
体温を下げるために、氷や冷たいタオルで首筋や脇の下、足のつけ根などの血管が集中する部分を冷やします。
⑤医療機関を受診する
水が飲めなかったり、呼びかけても反応がなかったり、熱中症の症状が重度の場合 は、上記の処置では不十分で、病院などの医療機関での治療が必要となります。症状が軽度の場合でも、症状が改善しない場合や、意識が朦朧としているなど深刻な状態の場合は、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
全10回となった「そらトレ」ですが、今回で連載は終了となります。今後も「そらくら」では気象や運動、健康に関する記事を出していきますのでご期待ください!

<参考>
日本スポーツ健康学学会認定 熱中症予防指導士講習会テキスト改訂版(2021年12月)
総務省「令和4年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」:
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01shoubo01_02000623.html
Japan Sport Association スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック:
https://www.japan-sports.or.jp/medicine/heatstroke/tabid523.html#04