【防災コラム】気象予報士が解説!土砂災害への備えや避難の判断は?

6月30日(金)以降は梅雨前線が活発となり、各地で大雨が予想されています。梅雨末期のこれからの時期は、各地で豪雨となり、土砂災害などのリスクが高まります。記憶の新しい令和3年の7月3日には静岡県熱海市で土砂災害があり、多くの人命が失われました。土砂災害に対する正しい知識を身に着け、自分は関係ないと切り分けずに、自分の身は自分で守れるようにしましょう。

近年の土砂災害と土砂・洪水氾濫

上の写真は平成29年7月に発生した九州北部豪雨の際の被害を筆者が撮影したものです。この災害では、福岡県や大分県を中心に死者37名、行方不明者4名(内閣府HPより)という甚大な被害を及ぼしました。この期間は 線状降水帯が形成され、多いところで2日間に500ミリを超える降雨となり、7月の月降水量の平年値を超える大雨になりました。特徴としては、河川の氾濫だけではなく、土砂が洪水とともに流下する「土砂・洪水氾濫」が発生したと考えられています。
下の図は「土砂・洪水氾濫」と一般的な「土石流」を比較したものになります。いわゆる「土石流」は山地を中心にピンポイントで発生し、土砂災害警戒区域などでハザードマップに記されていますが、「土砂・洪水氾濫」は多数の土石流で発生した土砂と降雨による洪水が一緒に流下する現象で、広範囲に被害が及びます。その結果表紙の写真のように、土砂や泥とともに土砂災害警戒区域の外側の住宅地を襲うこともあります。

土砂災害を防ぐ施設 砂防堰堤の役割

土砂災害の被害を減らすために、国や県などで行う砂防施設として代表的なものは「砂防堰堤 (さぼうえんてい)」と呼ばれるものがあります。下の写真は砂防堰堤を撮影したものです。小さいダムのように見えるかと思いますが、砂防堰堤は堰(せき)の役割を果たし、上流から流れてくる土砂や流木をせき止め、下流に流れる量を減らす役割を持っています。土砂災害の発生が予想される河川や渓流には砂防堰堤が作られ、土石流を止めた後は、上流の土砂や流木を撤去したりして、次の災害に備える仕組みがあります。ただ、想定外の降水があると九州の事例のように防ぎきれないケースも出てくるため、自ら避難する必要があります。

土砂災害に関する情報

では、避難をする にあたりどのような情報があるのでしょうか。
気象庁が発表する情報に注意報や警報があります。これは降雨の状況やこれまでに降った雨の量から地盤のゆるみを判断し、土砂災害発生の可能性の高まりを知らせるものです。テレビやラジオ、市町村によっては、防災無線で知ることができる情報です。土砂災害警戒情報や大雨警報が発表された場合は、避難を検討してください。ただ、「土砂・洪水氾濫」のような場合は、上流で警報などが発表されたかをアンテナを高くして確認しておく必要があります。
また、気象庁ではキキクル(危険度分布)と呼ばれ、マップ上で災害の危険性がわかる情報を出しています。こちらから確認できます。https://www.jma.go.jp/bosai/risk/

避難の判断や避難の仕方

災害の危険性が高まり、市町村から避難指示が発表されたら、速やかに避難行動をとってください。ただ、迫っている災害の種類によって避難の仕方が異なりますので、事前に自身の住んでいる場所がどんなリスクを抱えた所なのか、必ずハザードマップで確認しておきましょう。そして、あらかじめ避難場所やそこまでの経路を確認しておいてください。土砂災害が予想されれば斜面を通る避難経路を避けたり、洪水が予想されれば川沿いの経路を避けたりする必要があります。避難所に行けば、食料や水、毛布など備蓄品などの供給を受けることもできます。
もし、すでに避難できない状況の場合は、自宅の2階など垂直避難を心がけてください。表紙の写真を見てもわかるように1階部分は被災しても、2階部分は無事であるケースは多く、必ず安全とは言い切れませんが、身を守れる可能性が高まります。

このように近年温暖化の影響もあり、急な大雨が増えてきているため、土砂災害も多様化してきています。山地の急斜面で起こるイメージを持たれていた方も多いと思いますが、平地でもその影響を受ける可能性があり、自分と関係がないと切り分けてしまわないようにしましょう。また、気象庁や市町村から出る情報を今回紹介しましたが、最終的に自身の身を守るのは自分自身です。今一度避難所や避難所までのルートの確認、備蓄などできることは行っておきましょう。

<参考>
内閣府HP 平成29年7月九州北部豪雨の被害状況と対応等について:
https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h29/88/disaster.html
国土交通省HP 土砂・洪水氾濫とは?:
https://www.mlit.go.jp/common/001296657.pdf
気象庁HP 土砂災害に関する防災気象情報の活用:
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/ame_chuui/ame_chuui_p8-1.html