食中毒は年間を通して発生しますが、梅雨時期から夏にかけては、細菌性の食中毒が発生しやすくなります。このコラムでは、食中毒の症状や原因、発症までにかかる時間、予防・対処方法などについて、解説していきます。
食中毒の症状や発症までの時間
食中毒は様々な細菌やウイルスが原因で引き起こされます。主な症状は、下痢や腹痛、発熱、吐き気などで、時には命にかかわることもあります。特に、症状の悪化しやすい妊婦や乳幼児、高齢者は注意が必要です。
食中毒の潜伏期間は、原因となる食中毒菌やウイルスによって違います。摂取量などによっても異なりますが、農林水産省によると、主な細菌の症状や何時間後に発症するのか、原因となりやすい食品は、以下の通りです。
・症状:おう吐、腹痛、下痢、発熱など
・発症までの時間:食後6~48時間
・原因となりやすい食品:加熱不足の卵・肉・魚など
・症状:激しい腹痛、下痢、下血など
・発症までの時間:食後3~8日
・原因となりやすい食品:加熱不足の肉や生野菜など
・症状:下痢、発熱、おう吐、腹痛、筋肉痛など
・発症までの時間:食後1~7日
・原因となりやすい食品:加熱不足の肉や生野菜など
・症状:吐き気、おう吐、腹痛など
・発症までの時間:食後1~6時間
・原因となりやすい食品:加熱した後に手作業をする食べ物
・症状:激しい下痢、腹痛など
・発症までの時間:食後4~96時間
・原因となりやすい食品:生の魚や貝などの魚介類
また、ウイルスとしては、ノロウイルスやE型肝炎ウイルスが代表的です。ノロウイルスは加熱不足の二枚貝、E型肝炎ウイルスは加熱不足の豚・イノシシなどの肉や内臓が主な原因です。
食中毒を引き起こす気象要因
上記は、令和4年における病因物質別の月別食中毒発生状況(患者数)を表したグラフです。
食中毒の主な原因は、前述のように細菌やウイルスですが、温度や湿度などの気象条件も重要です。
気温が高い時は、食中毒の原因となる細菌が繁殖しやすく、多くの細菌は人の体温ぐらいの温度で増殖のスピードが速くなります。また、湿度が高い環境でも細菌は繁殖しやすいため、特に梅雨時期から夏にかけては、細菌性の食中毒が増加してしまいます。
一方、ウイルスは低温や乾燥した環境を好むため、ウイルス性の食中毒は冬に多く発生します。代表的なものがノロウイルスで、年間の食中毒患者数の半分以上をも占めるそうです。
食中毒の予防・対処方法
・予防方法
細菌性の食中毒を防ぐためには、①細菌を食べ物に「付けない」、②食べ物に付着した細菌を「増やさない」、③食べ物や調理器具に付着した細菌を「やっつける」という、食中毒予防の3原則が重要です。
「付けない」ためには、食べ物に触る前には手を洗って清潔にし、調理器具も洗浄・消毒を徹底しましょう。
「増やさない」ためには、作った料理を適切な温度で保管することが大切です。
「やっつける」ためには、加熱処理が重要です。ほとんどの細菌は、中心温度75℃の状態で1分以上加熱をすれば死滅します。
お弁当の場合、手を清潔にすることはもちろんですが、素手でおかずを触らずに詰めるようにしましょう。また、加熱処理をしたおかずや、温かいご飯は、必ず冷ましてからふたを閉めてください。食材は細菌の繁殖を防ぐ効果のある、お酢や梅干しなどを用いることもおすすめです。さらに、保冷剤をつけたり、ペットボトルを凍らせて保冷剤代わりにしたりし、食べる直前にも再加熱をするとよいでしょう。
・対処方法
食中毒の疑いがある場合は、医師の診断を受けましょう。自己判断で市販薬を服用するのは避けてください。また、下痢やおう吐がある場合は、脱水症状を起こす可能性がありますので、水分を十分にとりましょう。寝るときは、吐いたものが喉に詰まらないように横向きにし、同居する家族などにうつらないように消毒を徹底してください。
<参考>
・農林水産省ホームページ 「食中毒から身を守るには」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/index.html
・厚生労働省 「食中毒統計資料」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html