2023年の春一番はいつ吹く?春一番の意味を解説

毎年2月4日頃は「立春」、つまり暦の上では春が始まります。平年でも気温が少しずつ上昇し、春らしさが感じられるようになり、各地で梅が開花します。この時期に日本海で低気圧が発達すると南寄りの風が強く吹くことがあります。これを「春一番」と呼びます。春の訪れとともに防災上も非常に重要な意味を持っています。

キャンディーズの歌にも出てくる春一番

春一番といえば、キャンディーズの歌を思い浮かべる方もいるかと思います。春の訪れと新しい恋の後押しをしてくれる曲です。気象で扱う「春一番」も春の訪れを告げる点では似ています。曲の中では穏やかなイメージがありますが、実際に春一番の吹くときは、気温が上がることで積雪地ではなだれの発生する可能性が高まり、南寄りの風が強まることで強風や火災などにつながることがあります。

由来は昔、漁師の間で「春一」と呼ばれていた強い南風を「春一番」と呼ぶようになったようです。1859年2月13日に長崎県壱岐郡郷ノ浦町の漁師が出漁中に、南寄りの強風によって転覆し、53人の死者を出したことがきっかけと言われています。

春一番は風速何メートル?

「春一番」は北日本と沖縄を除く地域で発表され、関東地方における判断基準は下記になります。
・立春(今年2023年は2月4日)から春分(今年は3月21日)までの間
・日本海に低気圧がある
・関東地方における最大風速がおおむね8m/s以上の南寄りの風が吹いて、気温が上がる

この基準は他の地域でも風速など多少違いがありますが、大きくは変わりません。このため、「春一番」は春の訪れを感じさせてくれる優しい響きではあるものの、防災上は、嵐の訪れを知らせ、海難や山岳遭難、火災への警戒を呼びかける重要な表現として扱われています。関東地方では、昨年2022年は3月5日に吹き、日本海の低気圧に向かって南寄りの風が強まりました。また、一昨年2021年は、統計開始以来、最も早い2月4日に発表されました。

南風による強風に注意

「春一番」によって工事現場でも事故が発生した例があります。2016年2月14日に東京都の大田区で「足場倒壊」が発生しました。
この事例はテレビでもリアルタイムで取り上げられ、14階建ての建設中のホテルの足場が風にあおられて、めくれ上がるように倒壊しました。この日はちょうど関東地方で「春一番」が吹いたため、この南寄りの強風によるものだと考えられます。幸いけが人はおらず、足場も地上へ落下しませんでしたが、設置したままにしておいた防音シートが風を受けて、足場の倒壊につながったと考えられています。このように急な南寄りの強風が吹くことで、思わぬ事故につながることがあります。
また、日本海側では、南寄りの風が山岳を越え、雨や雪を降らした後の乾燥した空気が吹き降りる「フェーン現象」で乾燥による火災のリスクがより高まります。

気温が上がり、なだれを引き起こしやすい

「春一番」の吹く頃は、低気圧に向かって暖かく湿った空気が流れ込むため、気温が上昇します。多雪地では表層の雪がとけてなだれの発生することがあります。1992年12月から2022年3月までの30年間の月別の集落雪崩(山岳や道路、スキー場等で発生した雪崩を除く、住家周辺で発生した雪崩)の発生件数を集計しました。

この表からもわかるように2月に集落雪崩の発生件数が最も多くなっています。気温の上がるこの時期は、山間部のなだれに注意が必要です。また、暖かくなったその日になだれが起きなくても、暖かい空気で一度とけた積雪面が朝晩の冷え込みで再度凍結し、その上に新雪が積もることでなだれの起こりやすい状態になります。

梅の花が開花する頃

春に最初に咲く花といえば、梅を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。すでに気象庁から開花宣言が出ているところもありますが、毎年気象庁が気象官署内の標本木を決め、観測を行っています。対象の標本木の5~6輪の花が咲いた日を開花日としています。代表的な地点の梅の開花平年日をまとめました。

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このように「春一番」は暖かい春の訪れを知らせる一方、災害につながりやすい側面も持っています。お住まいの地域で春一番の言葉を聞いたら、強まる風や火災、なだれにご注意ください。

<参考>
全国の集落雪崩発生件数と死者・行方不明者数 国土交通省砂防部調べ:
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/content/001510734.pdf
気象庁「生物季節観測指針」2022年12月
https://www.data.jma.go.jp/sakura/data/shishin.pdf