冷え性の症状とは?
日に日に寒さが増していますが、これからが冬本番です。この冬はラニーニャ現象が終息に向かい、冬の終わりには正常な状態に戻るものの、1月と2月の気温は平年並か、平年を下回る予想もあります。手足の末端が一度冷えてしまうと温まらないという方は、集中力が続かなかったり、よく眠れなかったりするほかに、頭痛や肌荒れ、肩こりや腰痛、便秘、女性では生理不順や生理痛など様々な症状として現れます。このコラムでは冷え性の原因や改善・解消方法をお伝えします!
冷え性の原因
私たちの身体には体温を37℃前後に保つ働きが備わっています。ただ、寒い冬は、身体を冷やさないように、身体の中心部に血液を集中させ、体温を維持しようとするため、身体の末端部分である手先や足先には血液が行き渡りにくくなり、そもそもほかの季節に比べて手先や足先が温まりにくいです。また、身体の疲れやストレス、睡眠不足により、身体のさまざまな働きを調整する神経である、自律神経の乱れが起こっていると、体温調節が正常に機能できず、手足の血流量が抑制されてしまいます。近年では気圧や気温など、気象変化も身体にとってはストレスとなり、自律神経の乱れを引き起こすことがわかってきました。さらに、筋肉の量が少ないことによる産熱や血流量が少ないことも、身体の冷えやすさに繋がります。一般的に男性や運動している方よりも、女性や運動不足の方のほうが筋肉量が少ないため冷えを感じやすくなります。加えて、女性はホルモンバランスの乱れにより、生理前や生理中、更年期の際に血流が悪くなり冷え性が悪化することがあります。
冷え症の対策
手軽にできる冷え症の改善・解消方法をいくつか紹介します。ぜひ試してご自分に合う身体の温め方をみつけてみてください。
姿勢を正す
猫背など姿勢が悪く背骨が歪んでいると、自律神経はスムーズに脳から脊髄を通って全身に信号を送り出せません。長時間のデスクワークやスマートフォンでの作業は自律神経の乱れにつながります。また、姿勢を正すことで、筋肉や内臓へ負担が軽減し、血流改善やリラックス効果もあります。座るときは骨盤を立て足裏全体をしっかりと床につけてください。また、座りっぱなしなど同じ姿勢を続けることは避けるように心がけましょう。
呼吸法
身体が冷えているときは、自律神経の交感神経が優位になり、呼吸が浅く、筋肉が緊張していて、皮膚や末端の血管が収縮しています。ゆっくりと腹式呼吸をすることで、自律神経の副交感神経を優位にし、血管を広げ血流を改善することができます。
腹式呼吸の方法
1 鼻からゆっくりと息を吸い、ゆっくりとお腹を膨らませる。(4秒間)
2 息を十分に吸い込んだら、いったん息を止める。
3 口からゆっくりと息を吐ききる。(8秒間)
4 1から3を3~5分繰りかえす。
また、ヨガは呼吸法を取り入れているためおすすめです。最近では、動画サイトでもヨガを紹介しているものもあり、私も休日や寝る前に利用しています。
温めは3つの首+おなか
昔から身体を温めるには3つの首を温めるといいと言われています。3つの首とは「首」「手首」「足首」のことです。これらの皮膚の表面近くには、血流の多い血管(動脈)が走っているため、効率的に身体を温めることができます。また、副交感神経の中枢のあるお尻の少し上の仙骨と呼ばれる部分と、腸や子宮などに近いお腹を含む腰回りを温めることでも、全身に血が巡って身体が温まります。
身体を温める食材をとる
東洋医学では食材には身体を温める作用をするもの、冷やす作用をするもの、中立のものという考え方があります。身体を冷やす食材でも、加熱調理をすることで冷やす作用から温める作用に変わる食材もあります。こちらのコラムを参考にしてみてください。
栄養バランスのいい食事
女子大学生を対象とした冷えと食生活の研究結果によると、冷たい飲み物の摂取のほかに、甘いものや菓子パンなどの間食をよくしていたり、パスタなどの麺類を好んで食べていたりする場合は、冷えの症状を訴えているケースが多かったことがわかりました。体温を保つためには、身体の熱を作り出す、糖類・脂質・タンパク質の三つの栄養素が欠かせません。例えば、米やパン、じゃがいもに含まれる糖質は消化器官で消化酵素によって分解され、ブドウ糖として身体の中へ吸収されます。ただ、それだけでは、体温を保つだけのエネルギーには変わりません。体温を保つためのエネルギーに変えるには、ブドウ糖の分解に関わる酵素群と、ビタミンやミネラルとが結合することが必要です。冷え性の予防や症状を軽減するためには、多くの品目の食品を摂り、栄養バランスのいい食事を心がけることが大切です。日頃の生活で外食が多くなると栄養バランスが偏りがちになります。サプリメントでビタミンやミネラルを補うことも効果的でしょう。
継続的な運動
冷え症の方は普通の方よりも、血管が硬く老化しているということがわかっています。血管が硬いと、血液の循環が悪く、冷え症の原因になっているのだとか。ストレッチやウォーキングなどの運動を継続して行うことで筋肉をしなやかにし、血管を柔らかくすることができ、筋肉量も増やせて根本的な冷え改善につなげることができます。運動をするまとまった時間がとれないという方は、日常のちょっとした時間に行うだけでもいいのです。おすすめは、つま先立ちを繰り返す運動。ポイントはかかとを下す際に床につかないようにすることです。料理などの家事やお風呂上りにドライヤーを使って髪を乾かす時間にも行えます。また、座りながらでも効果があり、デスクワーク中にこっそり行うこともできます。
参考
「若年女性の冷えと食および生活習慣との関連」日本食生活学会誌 第26号 第4号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh/26/4/26_197/_pdf
厚生労働省 こころの耳 5分研修シリーズ
https://kokoro.mhlw.go.jp/fivemin/#f-1-3
文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(8訂)
東京医科歯科大学医学部卒。同大学小児科学教室に入局、関連病院で研修後、子育て期間を経て、現在は東京都内、埼玉県内のクリニックに勤務。日々こどもの診療に奮闘中。自然科学全般に興味があり、気象予報士の資格も取得。