記録的短時間大雨情報ってなに?発表基準や大雨特別警報の違いを気象予報士が解説

例年、夏になると気温の上がる午後は雷雲が発生・発達しやすく、急な雷雨になることがあります。時には『ゲリラ豪雨』と呼ばれるような大雨となることがあり、気象庁からは『記録的短時間大雨情報』が発表されるケースがあります。
このコラムでは、記録的短時間大雨情報について、大雨特別警報との違いや対応も含め、気象予報士が解説していきます。

「記録的短時間大雨情報」とは?発表基準は?

記録的短時間大雨情報は、数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨を観測もしくは解析したときに気象庁から発表される情報です。①雨量の基準を満たし、②大雨警報発表中に③キキクル(危険度分布)の「危険(紫色)」が出現する、の3つの条件が満たされた場合に発表されます。
記録雨
雨量の基準は1時間に降った雨の量が歴代1位もしくは2位の記録が参考になっているため、地域ごとに閾値が異なります。北海道の一部や福井県などで1時間に80mmとなっている一方、三重県や高知県、宮崎県、鹿児島県などで1時間に120mmとなっています。

大雨特別警報との違い

大雨特別警報と記録的短時間大雨情報、どちらも災害の危険度が迫っていて、混同される方もいるかもしれませんが、発表基準と意味が異なります。
警戒レベル
記録的短時間大雨情報は、警戒レベル4以上に相当する情報です。すでに警報が発表され、災害が差し迫っています。危険な場所から全員避難が必要なレベルです。
一方、大雨特別警報は、警戒レベルごとに取るべき行動では5段階の警戒レベルのうちレベル5に該当します。警報の基準をはるかに超える大雨等が予想され、重大な災害が起こるおそれが著しく高まっている場合に発表され、最大級の警戒が必要です。
大雨の特別警報が発表されるときに、記録的短時間大雨情報が発表されるケースもあり、いずれの情報が発表される場合も、すぐに避難行動に移せるよう事前に準備をしておくことが大切です。

過去の事例:2024年8月21日の都内の記録雨

昨年2024年8月下旬は関東地方を中心に急な雷雨、いわゆる『ゲリラ豪雨』の発生が多く、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか?

2024年8月21日は、日中の気温が高くなり、大気の状態が非常に不安定となりました。アメダス世田谷では1時間52.5mmの非常に激しい雨が観測され、19時には東京都港区付近でレーダーによる解析で約100mmの雨が降ったとされ、『記録的短時間大雨情報』が発表されました。
都内の各地で猛烈な大雨が降ったとみられ、東京新宿区では、下水道のマンホールのふたが吹き飛び(エアピストン現象が発生)、都営地下鉄・麻布十番駅や東京メトロ・市ヶ谷駅など地下鉄の改札は浸水による被害が発生しました。

記録的短時間大雨情報が発表されたときの対応

大気の状態が非常に不安定なときに発生しやすい記録的短時間大雨情報は、①上空に寒気が流れ込む場合、②暖かな空気や日中の昇温、③台風や前線、低気圧などの接近時に大雨となった場合に、発表されやすくなります。
記録的短時間大雨情報が発表される場合は、いつ災害が発生してもおかしくない状況です。
まずは、窓の外を確認し、安全かどうかを確認しましょう。また、スマートフォンをお持ちの場合は、気象庁のキキクルで周囲の危険度をチェックしてください。
・自宅にいる場合
垂直避難
まだ移動ができる場合は、コンクリート製の頑丈な建物の中に身を寄せ、安全を確保してください(水平避難)。
家の周りが浸水していたり、崖崩れがすでに発生したりする状況の場合は、外に出て、避難は危険を伴いますので、自宅の2階以上の崖から離れた安全な部屋で過ごすようにしてください(垂直避難)。

・外出先で発表されたら
外出先で発表されるケースは、こちらも身の安全を確保することが大切です。
激しい雨
1時間30mm以上の激しい雨でも道路が川のようになり、ブレーキが利かなくなる可能性があり、車の運転中の大雨は特に注意が必要です。また、万が一冠水に巻き込まれる場合は、一般に水深が50cm前後になると車のドアが開かなくなり、車内に閉じ込められる危険があります。
出発地や目的地だけではなく、ルートに川沿いやアンダーパスなど危険な場所があれば、迂回路を検討するなど、事前に備えることが大切です。
また、浸水が発生していると、マンホールのふたが外れていることに気づかないこともあります。やむを得ず徒歩で移動する必要がある場合は、マンホールには近づかず、傘などを使って、道がしっかりとあるか確認をしてください。

・都市部ならではの浸水に注意
水は高い場所から低い場所に移動します。地下鉄や地下街などに流れ込みやすく、記録的短時間大雨情報が発表されるような場合は特に注意が必要です。なるべく高い場所に落ち着いて移動しましょう。

<参考・画像引用>
・気象庁「記録的短時間大雨情報」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/kirokuame.html

・気象庁「特別警報について」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/tokubetsu-keiho/