前線の種類や特徴は?天気図の記号も気象予報士がわかりやすく解説!

天気予報でよく見聞きする「前線」とは一体どのようなものなのでしょうか?
気象予報士が雲の特徴や天気図の記号も含めて、わかりやすく解説していきます!

温暖前線と寒冷前線の特徴や雲、風向きの変化は?

「前線」とは、暖かい空気と冷たい空気の境目のことです。暖かい空気と冷たい空気は性質が異なるため混ざりにくく、前線付近では軽くて暖かい空気が持ち上がり、雲ができやすく、雨を降らせます。
前線は4種類に分類され、「温暖前線」「寒冷前線」「停滞前線」「閉塞前線」があります。

温暖前線とは

温暖前線
温暖前線では、暖かい空気が冷たい空気を押すため、はい上がって進んでいきます。このため、横に広いタイプの層雲(そううん)と呼ばれる雲が多く、シトシトした雨を降らせます。温暖前線が通過すると、風向きが東から南に変わります。

寒冷前線とは

寒冷前線
寒冷前線では、冷たい空気が暖かな空気の下に潜り込むことで進んでいきます。暖かい空気が一気に持ち上げられることで、縦に長いタイプの積雲(せきうん)が多くなり、通過のタイミングでは、短時間にザーッと強い雨が降ります。寒冷前線が通過すると、風向きが南から北へ変わり、通過後は冷たい空気が流れ込みます。

停滞前線と閉塞前線の違いは?記号や天気図をチェック

停滞前線と閉塞前線

停滞前線とは

暖かな空気と冷たい空気の勢力が同じぐらいで、拮抗する場合は温暖前線や寒冷前線にはならず、停滞前線となります。記号では温暖前線の半円と寒冷前線の三角形が組み合わさったようなマークとなっています。天気図では、季節を問わず見られますが、比較的多いのは6~7月頃の梅雨時期と、9~10月頃の秋雨シーズンです。

閉塞前線とは

低気圧が発達し、寒冷前線が温暖前線に追いついてしまうことがあります。この場合は閉塞前線として表記されます。マークは停滞前線と同じように温暖前線の半円と寒冷前線の三角形の組み合わせですが、停滞前線は寒冷前線の三角形を下側に書くのに対し、閉塞前線は上側に書きます。閉塞前線では強い上昇気流が発生し、雨が強く降り、降水量が多くなる傾向があります。
過去の天気図20250510
天気図上では4種類の前線が同時に描かれることもあり、それぞれの前線ごとに雲や雨に特徴があります。どのような天気になるのか観察をしても良いかもしれません。

梅雨前線のでき方や気団ってなに?

前線は4種類に分類されるとお伝えしましたが、そのほかに「梅雨前線」や「秋雨前線」を見聞きすることも多いですよね?
気団とは
梅雨前線は早ければ5月頃から天気図上に現れる前線です。
前線は性質の異なる空気がぶつかって発生しますが、梅雨前線では「オホーツク海気団」と「小笠原気団」がぶつかり合います。オホーツク海気団は、冷たく湿った性質を持っている一方、小笠原気団は暑く湿った性質を持ち合わせています。
梅雨前線が南下すると前線の北側の「オホーツク海気団」が卓越します。オホーツク海からの冷たい空気が流れ込み、東北太平洋側を中心に「やませ」による冷害が発生する可能性があります。また、北海道太平洋側や関東は気温が低くなり、平年以下のひんやりとした空気に包まれることがあります。
一方、梅雨前線が北上し、前線の南側の「小笠原気団」が日本付近に張り出し、1週間以上続くようであればいよいよ梅雨明け宣言となり、本格的な夏の到来になります。梅雨明けすると熱中症のリスクがより一層高まります。

秋雨前線ではどんな天気に?台風の接近と重なると大雨に要注意

秋雨前線+台風
9月から10月に停滞前線が現れる場合は「秋雨前線」と呼ばれることがあります。梅雨のように明確に「梅雨入り」「梅雨明け」の宣言はありませんが、台風の接近と重なる場合は特に大雨に注意が必要です。
台風は秋に発生しやすく、特に9月は台風の上陸数が1年で最も多い月となっています。台風が接近することで、熱帯由来の非常に暖かく湿った空気が秋雨前線に流れ込み、雨のもととなる水蒸気が供給され、前線の活動が活発になり、雨雲が発達しやすくなります。
そらくらの「備えてくらす もしもの防災」では、大雨発生のメカニズムや対策をまとめていますので、この機会に見直してみましょう!

<参考>
・気象庁「気圧配置 気団・前線・気圧配置・天気図・気圧系の発達、移動に関する用語」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/haichi3.html