2024年のボージョレヌーボーの解禁日まであとわずかとなっています。
今回はワインの原料であるぶどうについて、天気や温暖化の影響を絡めてお話します。
美味しいぶどうのできる条件は?
美味しいぶどうのできる条件は、①日照時間が長く、②朝晩と日中の気温差が大きく、③
比較的乾燥した土地で降水量の少ない場所です。
1つ目は日照時間です。葉のある時期に十分な日照があると光合成もスムーズです。光合成によって、糖分が作られるため、甘みの強い美味しい果実になります。
2つ目は一日の寒暖差が大きいことです。光合成は糖分を作ると同時に、二酸化炭素を取り入れ酸素を出す呼吸の働きをしています。この呼吸は気温が高いと活発になり、エネルギーである糖分を消費します。一方、気温がグッと下がることで、呼吸が少なくなり糖分が分解される量も減るため、糖分が果実に蓄積されていきます。夜間に熱帯夜が続くような地域よりも、朝晩の気温がグッと下がる盆地の気候のほうがおいしいぶどう作りに適した環境といえます。
最後に、降水量が少なく比較的乾燥した土地であることもポイントです。
ほどよく乾燥した土地のぶどうは、実は小ぶりながらも糖度が高くなります。
雨が多いと、実は大きくなりますが甘さが少なくなったり、実が割れたりしてしまいます。
温暖化が進行すると、ぶどうはどうなる?
写真提供:農研機構
美味しいぶどうになる3つの条件を例に見てきましたが、ぶどうは天候に左右されるデリケートな果物と言えます。近年は、ゲリラ豪雨など極端な気象現象の多発、夏や秋の厳しい暑さなどでも感じるように、気象学者の間でも地球温暖化による影響が指摘されています。
温暖化はぶどうにも影響を及ぼしていて、高温により、ぶどうの色づきが遅れる、色づきが悪い、日焼けが発生する、障害果の発生、発芽不良、凍霜害、裂果、虫害の多発などが起こります。
上の画像では、気温が23℃のときは、ぶどうがしっかりと青紫色に色づいていますが、温度が高くなるほど色づきが薄くなっています。
色づきの進みは果実の糖度に比例するため、色づきが少ないと甘みの少ないぶどうとなってしまいます。
北海道は温暖化活用でワイナリー化進む
日本では温暖化を逆に利用する動きもあります。
北海道農政部の北海道のぶどうの栽培が徐々に進められてきています。
北海道では、醸造用ぶどう品種の「ピノ・ノワール」が栽培面積・収穫量ともに増加傾向となっています。
「ピノ・ノワール」とはフランスのブルゴーニュ地区が原産のぶどうで、古くからブルゴーニュの赤ワインを代表する高級品種です。
このぶどうは、植えられた土地と気象の条件を敏感に反映する特性があり、栽培が難しいとされています。
フランス以外の国で栽培が成功している地域は、アメリカのオレゴン州とカリフォルニアの一部、ニュージーランドとオーストラリアの一部といわれています。
日本の各地でも「ピノ・ノワール」の栽培に挑戦するワイナリーはありますが、本来寒冷な気候を好む品種のため、あまりに暑い地域だと栽培は適しません。
北海道の場合は、以前は生育期間が低温となるため栽培が難しいとされていましたが、2010年頃から生育期間である4月から10月の気温が高くなったことで、栽培が可能な気温になりつつあり、栽培面積、収穫量ともに増加傾向にあります。
2023年現在、国内でぶどうの収穫量の多い都道府県は、山梨県、長野県、岡山県、山形県、北海道の順で全国5位となっていますが、北海道で「ピノ・ノワール」の栽培がさらに増加すれば、北海道が世界有数のワイナリーとなるかもしれません。
出典
・農林水産省「地球温暖化対策」webサイト
(https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/ondanka/)
・農林水産省「令和5年産日本なし、ぶどうの結果樹面積、収穫量及び出荷量」
(https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/sakumotu/sakkyou_kajyu/nasi_budou/r5/)
・北海道webサイト「醸造用ぶどう関係資料」
(https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/nsk/kajyu/jouzouyoubudou.html)
・気候変動による北海道におけるワイン産地の確立
広田知良・山﨑太地・安井美裕・古川準三・丹羽勝久・根本学・
濱嵜孝弘・下田星児・菅野洋光・西尾善太 生物と気象17:34 – 45, 2017,2024-10-21
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/cib/17/0/17_J-17-034/_pdf)