高温多湿な夏は、我々人間と同様、ピアノやクラリネットなどの楽器にとっても過酷な環境です。湿度が高いと、楽器にはどんな影響があるのでしょうか?
楽器は大きく弦楽器・管楽器・打楽器・鍵盤楽器に分けられる
オーケストラや吹奏楽に用いられている楽器の分類は大きく分けて4種類あります。それぞれ簡単に見ていきましょう。
●弦楽器
バイオリンやチェロ、ギターなどが弦楽器の代表格。バイオリンやチェロなどは、弓で弦をこすって音を鳴らし、ギターなどは弦を弾いて振動させ音を出す楽器です。
●管楽器
木管楽器と金管楽器の2種類があり、木管楽器はフルートやクラリネット、金管楽器はトランペットやホルン、チューバなどの楽器があります。木管楽器の多くは、リードという葦(あし)の一種の茎で作られた薄い板を振動させて音を出す楽器です。一方、金管楽器は、奏者の唇を振動させて音を出します。
●打楽器
ティンパニやスネアドラム、木琴・鉄琴・トライアングル・タンバリンなど、打ったり・振ったり・こすったりして音を出す楽器です。
●鍵盤楽器
ピアノやオルガンなど鍵盤を使って音を出す楽器です。
湿度が高いと音程の狂いやケースのカビ・悪臭の原因になることも
湿度の影響は、木で出来ている楽器、特にピアノや木管楽器に大きな影響を与えます。最適な湿度は40〜60%と言われ、私たち人間が快適と感じる湿度と、だいたい同じと考えて良さそうです。多湿な状況が楽器にどのような影響を与えるか見てみましょう。
●ピアノ
高温多湿の環境では、響板が膨張し、弦が強く張ってしまい、音程が上がりやすくなります。
また、エアコンなどが近くにあり、ピアノに直接風が当たると、音程が変わりやすいことに加え、エアコンの直下にピアノがあるとエアコンから水が垂れる可能性もあるため、注意が必要です。
●管楽器
湿度の高い状態は、ケース内にカビが生えたり、嫌な臭いがしたりする原因になります。特に、ケースに繁殖したカビや臭いが、管へ移ってしまうと奏者の体にも悪影響が出てきます。特に、木管楽器のタンポ等や、金管楽器のコルク・フェルト類は、カビが繁殖したり臭いが移りやすいため要注意です。
また、木管楽器は管自体が湿気を吸って膨張してしまうため、音が鳴るポイントがずれたり、高温が出にくくなったり、鳴らしにくく感じてしまうこともあるようです。
●弦楽器
バイオリンやギターなどの弦楽器も、木材でできているため、湿気を吸い膨張してしまいます。音程を調節するためのペグが回りにくくなったり、ネックが反ったりしてしまうことがあります。
「音楽の秋」をアシストしているのかも
夏場は、楽器にとっても、奏者・来場者の方にとっても過酷。冬は冬で、今度は湿度が低下しすぎてしまい、乾燥によって音程が狂ったり、楽器を保管している場所によっては楽器にヒビが入ってしまうなど影響が出てしまうことも。
比較的快適に過ごせる秋になると演奏会などの音楽イベントが多く催されているのは、高温多湿の夏場の環境を避けて開催数を減らしているからかもしれないですね。
<参考資料>
楽器と木材
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/56/8/56_8_614/_pdf