太平洋側で雪をもたらす「南岸低気圧」とは?

太平洋側でも雪は降る

冬になると、日本海側を中心に雪が降り、太平洋側では晴れて乾燥する日が多くなります。ただ、太平洋側でも雪が降り、積雪となることがあるのです。東京都心で統計開始以来、一日に最も雪の降る量が深くなったのは1969年3月12日と1954年1月14日に記録した33cmとなっています。ここ10年間でも、2014年2月8日に22cm、2018年1月22日は23cmと、20cmを超える雪が降っていて、いずれも東京都心では大雪警報が発表されています。このように、太平洋側でも大雪となることがあるため、油断できません。実は、関東をはじめとする太平洋側で雪が降るときは「南岸低気圧」が原因となることがほとんどです。

 

雪をもたらす「南岸低気圧」とは?

南岸低気圧とは、日本列島の南岸(太平洋側)を発達しながら東へ進む低気圧のことです。なぜ、南岸低気圧が通過する際に、太平洋側で雪が降るかというと、寒気と暖気が関係しています。南岸低気圧の南側では暖かい空気が、北側には冷たい空気が流れ込みます。南岸低気圧が通過すると、日本列島の太平洋側の地域は低気圧の北側に位置するため、冷たい空気が入り、気温が下がります。気温が下がることで雨から雪に変わるのです。天気予報の世界では、上空約1500mの気温が-6℃の寒気が入ってくると、雪になる可能性が高いとされています。ただ、この南岸低気圧は、雨から雪に変わったり、雪が予想されていても、くもりに変わったり、予報がとても難しいことが特徴です。

(南岸低気圧が通過した時のイメージ)

特徴的だった太平洋側の雪の事例

■成人の日の大雪(2013年)

2013年1月14日、急速に発達した低気圧が日本の南岸を通過しました。この影響で、関東南部を中心に雪が降り、横浜で13cm、東京は8cmの積雪を観測しました。この日は「成人の日」で、各地で成人式が行われていましたが、交通機関が乱れたり、転倒してケガをしたりする人が相次ぎました。

 

■太平洋側で2回の大雪(2014年)

翌年の2014年2月7日~8日と2月14日~15日は、南岸低気圧が通過した影響で、西・東日本の太平洋側で雪が降りました。広い範囲で大雪となり、関東甲信を中心に最深積雪を大幅に更新しました。特に、2月14日~15日の南岸低気圧は、山梨県で記録的な大雪となり、一日で降った雪の量は、観測史上最大の甲府で83cm、河口湖は75cmとなりました(2023年1月6日現在)。太平洋側で大雪に見舞われた翌週にさらに大雪となることは、とても珍しく、交通機関やライフラインに大きな影響を及ぼしました。

雨か雪になる条件がある

南岸低気圧の通過時に雨か雪になるかは、気温湿度によって決まります。気温が0℃前後で雨は雪に変わることは想像しやすいと思いますが、湿度によっても降るものが変化します。実は、湿度が低くなればなるほど、高い気温でも雪になりやすいという性質があります。下の雨雪判別表を見ると、湿度が100%に近いときは地上気温が0℃から2℃ぐらいでみぞれや雪に変わりますが(赤丸)、湿度が50%前後だと地上気温が5℃から6℃ぐらいでも雪に変わることがあります(星印)。このことから、雨か雪かを予測するには気温だけではなく、湿度も重要になってきます。

以上、南岸低気圧や雪になる条件を解説しました。南岸低気圧は予報が難しいため、関東地方などの太平洋側で雪の予報が発表されたら、こまめに天気予報をチェックしましょう。これから春先にかけては南岸低気圧が通過しやすく、雪の可能性が高まりますので、対策はこちらのコラムで事前に確認を!

いまから備えておきたい、都心の雪対策を知ろう!

 

参考

気象庁 予報が難しい現象について(太平洋側の大雪)

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yohokaisetu/ooyuki.html

気象庁 日々の天気図 2013年1月

https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/data/hibiten/2013/201301.pdf

気象庁 日々の天気図 2014年2月

https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/data/hibiten/2014/201401.pdf