日本海側に大雪をもたらすJPCZとは?過去の事例から備えを考える

冬の天気予報でよく耳にする「冬型」あるいは「西高東低」の気圧配置。どちらも同じ気圧配置で、日本海側中心に雪の降る原因となります。また、近年は「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」という言葉が頻繁に取り立たされるようになりました。
このコラムでは、主に日本海側で降る雪のメカニズムと過去の事例、大雪への備えについて考えていきます。

そもそも冬型の気圧配置とは

「冬型(西高東低)」の気圧配置とは、西の大陸側にシベリア高気圧という冷たく乾燥した高気圧が、東の北太平洋に低気圧が居座っている状態です。この気圧配置になると、日本付近はシベリア高気圧から吹き出す北西の季節風によって、日本海側を中心に雪が降ります。
さらに詳しくみていくと、冬型には「山雪型」と「里雪型」の2パターンがあります。どちらも日本海側中心に影響を及ぼすのですが、山雪型は南北にのびる等圧線が縞模様になって天気図に現れ、主に山間部に雪をもたらします。一方、里雪型は、等圧線が日本海で袋状にたるみ、海沿いや平野部で積雪が増えるのが特徴です。

気象庁 知識・解説 「山雪 / 里雪」を元に作成

なぜ日本海側中心なのか

シベリア高気圧は背の低い高気圧のため、そこから吹き出す季節風も基本的に山脈を越えられません。冬型の気圧配置のときに太平洋側がカラッと晴れて、冷たい風が吹くのはこのためです。
ただ、シベリア高気圧の勢力が強まったり、低気圧が発達したりすると、冬型が強まって名古屋などの太平洋側にも雪雲が流れ込むことがあります。日本列島に5本以上の等圧線のかかる状態が「強い冬型」の目安とされますので、下のような天気図を見かけたら注意が必要です。

強い冬型の気圧配置の特徴

JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)とは

ここまで冬型の気圧配置の話をしてきましたが、JPCZも冬型のときに発生します。
シベリア高気圧から吹き出す季節風は、長白山脈(中国と北朝鮮の国境付近に位置する2,500m以上の山を含む山脈)を越えられず、いったん二手に分かれます。そして、風下にあたる日本海で合流すると、収束帯(雲の発達しやすいライン)が形成され、雪雲が発達しやすくなります。この収束帯がJPCZと呼ばれ、東北南部や、北陸から山陰の日本海側を中心に雪雲が次々と流れ込んで、短時間で積雪の急増するおそれがあります。

JPCZによる過去の大雪の事例 ―2018年北陸豪雪

2017年12月から2018年2月にかけては、冬型の気圧配置が強まることが多く、2018年2月5~8日は、福井県嶺北地方や石川県加賀地方を中心に記録的な大雪となりました。福井県や石川県の国道で最大約1,500台の車の立ち往生が発生したのは、記憶に新しいのではないでしょうか。
2月7日には福井で147cm、金沢で87cm、富山で75cmの積雪を記録し、2月8日になると島根県東部などでも大雪となり、松江では49cmの積雪を観測しました。

豪雪地帯の雪対策で大切なことは

普段から雪に慣れている地域の方も、決して油断はしないでください。総務省消防庁によると、昨シーズンの雪による死者数は110人で、特に65歳以上の高齢者の方が多くなっています
この中で特に多いのが、屋根の雪下ろしなど除雪作業中に亡くなった方です。除雪作業中に転落したり、屋根からの落雪に埋もれてしまったりする事故は毎年のように起こっています。
雪下ろしなど除雪作業はこまめに行い、比較的気温の高い日は落雪の危険が高い軒先に近づかないようにしましょう。除雪作業は必ず2人以上で声を掛け合い、安全を確保して行うようにしてください

また、立ち往生を防ぐためには、大雪が予想される日に自動車での移動を控えるのが第一です。やむを得ない場合は、道路情報を確認した上で無理のない範囲とし、スタッドレスタイヤやチェーンの装着、毛布などの防寒具や飲食料を用意するなど、万が一に備えてください。雪で車のマフラーが詰まってしまうと一酸化炭素中毒になるおそれがあるため、雪かき用のスコップも常備するとよさそうです。また、渋滞や通行規制に巻き込まれる可能性もありますので、時間に余裕を持ち、ガソリンなどの燃料は満タンにしておきましょう

2021年秋から続いているラニーニャ現象は、今後終息に向かい、冬の終わりには平常の状態に戻る可能性が高くなっています。ただ、11月22日に発表された3か月予報では、2月にかけて気温は全国的に平年並みか低く、日本海側の降雪量は平年並みか多い予想となっています。西回りの寒気流入によって、日本海側は大雪となる可能性もあります。
週間予報を見てこの先の天気を確認し、早めに対策を講じましょう。

 

<引用・参考>
・気象庁 知識・解説 山雪 / 里雪
https://www.data.jma.go.jp/cpd/j_climate/hokuriku/column02.html

・総務省消防庁 今冬の雪による被害状況等(令和3年11月1日~令和4年3月31日)
https://www.fdma.go.jp/disaster/info/items/8b2db6893af4d269929dd440d8060d372bfa8839.pdf